ナノアット(NaNo Art)の2023-24年秋冬コレクションが、2023年3月20日(月)に青山・スパイラル ホールで発表された。
2019年のブランド設立以来、ランウェイショー初開催となるナノアット。"What is value?"をテーマに掲げる今季は、デザイナー・後藤と田中が「洋服の価値は何に依拠するのか」を深掘りしたコレクションを展開する。アパレル販売までのストーリーではなく、消費者のウェア購入後の「心の動き」を重要視した、洋服の“真の価値”を問うスタイルを提案していく。
柱を設置し裁判所に見立てたホールで、法服をイメージした黒いドレスのファーストルック入場からショーがスタート。ドレスには、コレクションの随所で散見される価値の象徴のモチーフ“正義の女神ユースティティア”がプリントされている。セカンドルックからは「洋服の真の価値」を体現するように、2着ずつ対になったウェアたちが続々と登場。一見同じように見えるが、異なる素材を使用したウェアたちを対比しているのが特徴だ。
中でも好例となるのは、複雑な構造のラペルを持つテーラードジャケットのペアルック。どちらも類似したデザインではあるものの、片方は高級なシルクを、もう片方はカジュアルなポリエステルを使用。全く異なる価値のファブリックを使用した2つのルックを、本当に見破ることができるのか、観る者に問いかけているようだ。
また、細部にまでこだわったディテールのルックも数多くラインナップ。リブ部分がポリエステルかウールかという差のブルゾンのほか、シームにパイピングが施されているか否かという違いのトラウザー、教断したスカーフの柄が同じか異なるか、貝ボタンかプラスチック製なのかなど、消費者の価値観に委ねられたディテールだ。
さらに、全てのアイテムが公平中立を示す“天秤”に倣い、シンメトリーなパターンに基づいているのもポイント。ダッフルコートなど服の型は崩さずに、独創的な対称のパターンワークをあしらい、バランス良くまとめている。カラーパレットには、ブラック&ホワイトに加え、カーキやネイビー、ブルーなど落ち着いた寒色系が揃う。
今季のコレクションを通じて導き出された、“消費者の価値=その洋服の価値に直結する”という本質的な解。この発展産業において、消費者に選ばれ続ける“服作り”を極めていくナノアットの決意が感じられた。