日本の人気メンズブランド、PUBLIC IMAGE(パブリック イメージ)が2010-2011A/Wコレクションを映像で発表する。7月12日にすでにトレイラー版がリリースされ、話題を呼んでいる「STREET KNOWLEDGE2」の本編リリース直前にデザイナー玉木竜二郎氏へインタビューを行った。
今回のコレクション「STREET KNOWLEDGE 2」と参加プロジェクト「MORIYAMA ZOO」をメインとして、「90年代のカウンターカルチャー」をインスピレーションとしてきたファッションへの考え方、DJ/ProducerやComposerとしても活躍する自身の音楽活動などについて語ってもらった。
実際に店頭にアイテムが並ぶこれからの時期にコレクションを発表することは、シーズン前に発表するよりも、お客様へ伝わる温度を高く保てると思ったからです。また、コレクションを発表する上で、実際に「着る」ということを含め、的確なタイミングで出す方法を考えたということもあります。
そして、シーズン中に発表するということで、それを「どのように発表するか?」となったときに、映像を使った作品を展開し、全世界に配信しようと考えました。
そうですね。大きく分けると3つあって、「オフィシャルサイト」、「メディアサイト」、「ソーシャルネットワーク」です。
みんなが使っているソーシャルネットワークも使っていくと面白いんじゃないかなと。そうすることで、本来届かないところへも届くといいなと思ったんです。
例えばTwitterやFacebookなどは、タイムデザインしながら時間の経過とともに、リリースを少しつづずらしながらニアな身近な情報として、企画やデザインを発表していけるツールになっていると思います。さらにその情報が発表された時にも、オンタイム上でユーザが『見た!?』とか、リンクを貼ったりしながら発展していく。最近、そんな形が面白いなと感じるんです。まるで点と点がつながり線になっていくように大きなバズになったりするような。
そんな経緯から、今回は早いタイミングでトライしてみました。今回のテーマ「STREET KNOWLEDGE 2」は、こういった情報の回り方のプロセスさえも作品の一部として捉えたかったんです。
彼は、映像・写真・絵・ビルディングアートなどを手掛けるアーティストです。ニューヨーク出身でベルリンや東京など主要な都市を拠点にして活動しています。彼とは日常的なつながりから出会って、いろいろ話したりするうちに、今回こういう感じのものを撮りたいと話したことがきっかけとなり、一緒にやることになりました。
ショートムービーのオムニバス形式です。
どちらかというと、アート作品ですが、撮っていく上でのストーリーはあります。一番重要にしたかったのは、ストリートファッションの解釈というわけではなく、ライフスタイルの中から生まれる価値観・かっこよさです。そういうストリート感を映像にしました。
さりげない瞬間、自分自身が経験した瞬間、辿り着いた場所・光景を描きたいと思いました。もちろんディレクションはしていますが、ディレクションで作り込んでいくというものではなく、自然の流れの中で生まれてくるパワーを表現、そういった意味でのストリート感を表現したかったんです。
ミニマルを表現していたということはありますが、僕自身は日本(東京)らしさを表現したいと思っています。哲学的な部分ではなく、文化的な部分、東京っぽいという、生活感・ミックス感、都会的でシャープでクリーンな感覚で、それをデザインに落とし込んでいます。
もちろん根本は変わらないですが、サイズ感、アイテムのテンション、シルエットの変化はあります。
ルーズさの中にあるエレガンス、エレガンスの中にあるストリート感といったもの、そういったところをブレずにやっていきたいと考えていて、表現のグラウンド、着て貰う方々のイメージは変わってないんです。
そうですね。やっぱり自分も表現者であると同時に受け手でもあります。なので、いま何に魅かれているかとか、何がいま一番面白いと感じるかといった感覚は常に変化するものだと思うんです。
例えば、これまでのタイトなシルエットのテーラードの中から、ルーズなシルエットなものが出てきたときに『あ、面白いじゃん』って感じるといった、見ている側・受け側の感覚として、違ったものを見たときの面白さ(違和感、崩れた感じ)ということも意識している部分があって、そういうところから変化をつけています。
同じものを継続する良さと、それを裏切ることによる面白さといったもののバランスを考えて、コレクションとしてのストーリーを作りあげています。
先日大阪でワークショップを行ってきました。決められたことを発表するとか伝えるとかでなはくて、僕が半年間この「STREET KNOWLEDGE 2」というA/Wコレクションを作っていくためのプロセスとか、どういう環境で作られたのかということを、今っぽくiPadやPCなどで、自分の身の回りにあるもの・自分が今関わっていることなども並べて見せて、コレクションを展示しました。
そこでは、自分のPC内のブックマークを見せたり、制作する過程で聞いていた曲を流したりして、自分の友人が事務所に来たときと同じような温度や空気感を会場内に作りました。
来た人としゃべりながらコレクションを見て貰ったんです。中には「今こういうのを作ってて」という感じで、できかけの作品もありました。
そういう見せ方にも面白さがあって、お互い表現における理解が深まるのかなと思います。また、僕自身お客さんに触れ合う機会が多いわけではないので、こういった見せ方はこれからも続けていきたいと思っています。
90年代は雑食的であり、ミクスチャーと言えるのかもしれません。地にあったものの中へ、外から新しく別のものが入ってきて、その中で新たに解釈されたものとして世の中に発信されていく。そのようなキャッチボールが、いろいろなところで繰り返されて出来上がった「ミックス・カルチャー」という風に捉えています。
そうですね。アメリカの文化や遊び方が、身近なところに自然にありました。例えば、ジーンズを見て「あのジーンズかっこいいな」とか。そういう部分を表現したかったんです。
アメリカやヨーロッパなど海外の文化が、日本に輸入され展開されていく中で、90年代の裏原や渋谷など、ストリートカルチャーが逆に世界に「トーキョー」のカルチャーとして発信されていきました。それに勢いやパワーを感じていて、そのときの空気感やテンションとか、今のモード感を詰め込んで一つのパッケージングにしたかったんです。
コレクションでは、当時の時代感をそのまま出すのではなく、今のフィルターを通してどう解釈するかという視点で、一つの世界観を構築しました。2010年の「今」における「90年代感」です。
中高時代がちょうどヒップホップが盛り上がってきている時期でした。ビースティボーイズ(Beastie Boys)などに衝撃を受けて、真似事のように始めました。きっかけはそんなシンプルなものだったんです。徐々に音楽に魅せられていく中で、自分が音楽に携わっていく一つの手段としてDJを選びました。
自分がかけた音楽に対して、お客さんが反応を返してくれたり、そのような相互の関係性がとても楽しくなって、それはもちろん今も同じなんですが、これまでずっと続けてきました。
そうですね。きっかけは単純だったんですが、どんどん音を追求していくようになりましたよ。その当時はレコードしかなかったから、レコードを捜していろんな店を回ったりする中で、レアなレコードや隠れた名盤に出会うようになったんです。それでどんどんハマっていきました。(笑)
それはファッションです。自分でデザインしてブランドを持つという考えが最初からありましたので。
もちろん上京した当時からDJとして活動してました。その流れの中で、音楽を通じて出会う人が多かったのは事実です。ファッションや表現、クリエイティブな環境の中には自分と近い存在の人が多くて、音楽やファッションはもちろん、それ以外の様々な分野で共鳴しあい、リンクしていったんです。そうしているうちに活動の幅が広がっていきました。
難しいですね。(笑)
具体的に「何」と「何」がつながっているというわけではないと思います。ファッションも音楽も「ライフスタイル」の一部として生活の中にある程度密着しています。音楽を(意識的に)聴こうと思って聴くというよりも、自分が生活する流れの中で、例えば仕事の時の音楽であったり、通勤途中で聴いている音楽だったり、遊んでいる時に皆で聴いている音楽だったり、BGMに近い考え方でしょうか。その考え方はファッションに通じるものがあります。
そうですね。生活とか、ライフスタイルの中に、音楽もファッションも同じ位置(レイヤー)で溶け込んでいくということだと思います。
映画は作家の描くストーリーとか題材が明白だと思います。お客さんもそれを観に「行く」という(意識的な)感覚です。ただ、それを引いて見たときには「映画を観に行くこと」がライフスタイルの一部になりうると思います。
「MORIYAMA ZOO」は森山大道さんの動物に関わる写真集で、それにいろんなアーティストの楽曲が付属されたボックスセットです。写真集から楽曲のメディア、ボックス、付属のピクチャーヴァイナル、パッケージに至るまで、森山さんの写真がプリントされています。
昨年発売されたNO.1が好評で、NO.2の制作が決まり、楽曲を提供をすることになりました。もともと森山さんの作品が好きで、MORIYAMA ZOO NO.1も見させて頂いてすごく面白かったので参加できてとても光栄に思っています。参加メンバーを聞いたら、あまりの豪華さにビックリしましたが(笑)
MORIYAMA ZOO Web Site
制作にはとにかく時間がかかりました。というのも、ソフトは使わずに機材は全てアナログ機材を使ったんです。デジタルの環境だと、ソフトをインストールして、PC内で何でも出来てしまうんですが、アナログの機材は揃えるだけでも大変です。
レコーディングも、今だとPC一台でできてしまいますが、MTRで1トラックずつ録音していき、エフェクターなどを駆使しながら試行錯誤で制作を進めていきました。
まだ最終的に完成はしてないのですが(インタビューの時点で)、作品自体はすごくコンセプチュアルな作品に仕上がっていると思います。
違いはないんです。例えば、一つのコレクションを作るのと、一枚のアルバムを作るのとでは、ストーリーの展開の仕方から、それに対してどう考えていくか、思考のプロセスはまったく同じです。-もちろん作業自体は違うんですが。
【Infomation】
<PUBLIC IMAGE Web Site> http://www.public-image.jp
<COLLECTION Movie Link> http://www.public-image.jp/collection/movie.html
<MORIYAMA ZOO Web Site> http://www.powershovelbooks.com/moriyamazoo/01/
<問い合わせ>
HIVE co. / PUBLIC IMAGE
info@public-image.jp
TEL / +81 (0)3 6416 9810