ソウシオオツキ(SOSHIOTSUKI)の2024年秋冬コレクションが、2024年3月16日(土)、東京の渋谷ヒカリエにて発表された。
「good memory」と題された今季のソウシオオツキは、洗練された佇まいのなかに、その裏側を仄めかすようなノスタルジックな表情が蠢くようである。たとえば、テーラリング。コレクションの基調となるジャケットは、端正なセットインショルダーとボクシーなシルエットで仕立てつつ、ラペルには裏地とポケットをあらわにすることで、奥深く眠っていた記憶に微かに光をあてているかのようだ。
内側を曝けだす──それは、文字どおり衣服の表側と裏側を反転できるリバーシブルのウェアに、いっそう豊かにあらわれているといえる。ジャケットには、シルエットを作る曲線的なパターンやライニングの切り替え、内ポケットなど、衣服の構築性を内側から支える構造上の要素が、反転というひとひらの操作によって、造形性へと転換されていることが見て取れる。
記憶とは、ある時の出来事が時を経て現れるものであり、あるいは過去を振り返ってみて事後的に立ち現れるものであるというように、必ず過去と現在──そして、未来?──を架橋するという、時間のアナクロニズムに棹さすものである。だから、バルカラーコートやテーラードジャケットなど、ドレープ感のあるファブリックを用いつつ、その分量を多く取ることで、さながら余韻を残すような、リラクシングな佇まいに仕上げられている。
こうして、過去から現在に立ち現れる衣服は、原型とは異なる表情を帯びよう。ダブルブレストのスーツは、ハリのあるウールから一転し、光沢とドレープに秀でたファブリックへ。ショルダーも、些かドロップさせることで、テーラリングの構築性をリラックスさせているといえる。あるいは、デニムジャケットやデニムパンツは、グラデーションを帯びた表情に仕上げ、さながら経年変化を帯びたような佇まいへと昇華した。
このように、テーラリングを基調とするクラシカルな佇まいのなかに、日本的な要素を随所に見て取ることができるように思われる。着物を彷彿とさせる、ショルダーの直線的なパターンやカシュクール風の前合わせは、その例だろう。あるいは、神社のしめ縄を彷彿とさせるディテールをあしらったニットやタッセル、光沢のあるシャツにのせた極彩色の花鳥など、洗練されたウェアにアクセントを添える装飾的な要素としても取り入れられている。