映画『ボブ・マーリー:ONE LOVE』が2024年5月17日(金)に公開されるのにあたり、伝説的レゲエミュージシャンのボブ・マーリー役を務めたキングズリー・ベン=アディルにインタビューを実施。
「ロックの殿堂入り」を果たし、伝説のレゲエミュージシャンとして名を馳せるボブ・マーリー。レジェンドと称される彼を表すかのようなベスト・アルバム『レジェンド』は、世界で最も売れたレゲエ・アルバムとなっている。彼の生み出した楽曲の数々は、彼の心地よい歌声、社会的・宗教的なメッセージが込められた歌詞で、今なお多くの人々の心を惹きつけている。
そんなボブ・マーリーの波乱万丈な生涯を描く映画『ボブ・マーリー:ONE LOVE』が公開へ。ボブ・マーリーを演じたキングズリー・ベン=アディルは、どのようにして“レジェンド“ボブ・マーリーを理解し、精緻に演じたのか。公開にあたり、インタビューを実施した。
はじめに、俳優になると決意した時のきっかけや『あの夜、マイアミで』での活躍について質問。すると見えてきたのは、いつだって真摯に物事に向き合う彼の謙虚な姿勢だった。
振り返ってみて、いつ頃俳優になろうと思いましたか?
ギルドホール音楽演劇学校で演劇を学んで、24歳の時に卒業したのですが、俳優になろうと決めたのは、学校に入る2年くらい前でしょうか。さらに遡ると、14~15歳の頃、学校でいくつか演劇の経験をして、それが好きで、とても楽しかったのがきっかけかもしれません。
そこから時が経ち、『あの夜、マイアミで』でマルコムXを演じ、世界的にも注目を集めます。
運が良かったですね。もちろん、マルコムXの役を勝ち取るためにオーディションでは本当に頑張りました。そのプロセスの中でレジーナ監督と意気投合できたことも大きかったと思います。
『あの夜、マイアミで』出演後の影響はいかがでしたか?
すぐには分かりませんでしたが、振り返ってみると変化があったのが分かります。たくさん変わりました。本当に。読む脚本の量や受けるオファーの数も少しずつ増えていきました。
『あの夜、マイアミで』『ボブ・マーリー:ONE LOVE』共に歴史上実在した人物を演じました。実在の人物を演じる際にどのようなアプローチを行いますか?
心掛けたことは、彼らをヒーローとして演じるのではなく、人間として理解すること。脚本がどう彼らを描いているか、また、私たち普通の人が共感できるようなものは何か?彼らの苦悩とは何だったのかを考えました。
ボブ・マーリーとマルコムXへのアプローチ方法は基本的には同じで、キャラクターの危うさ、弱さを見つけようとしました。
キングズリーさんは、ボブ・マーリーをどのように解釈しましたか?
おそらくボブは自分の音楽活動への取り組み方に非常に厳しかった。彼は常により良いものを作りたいと思っていたので。私の解釈では、彼は完璧主義者。それは素晴らしいことではあるけれど、その分、危険な要素も含んでいました。でもその狂気とも言える完璧さのおかげで、彼は史上最高のアルバム『レジェンド』を作り上げました。
時々、ボブは休んでいたのかと疑問に思うことがありました。彼は毎日サッカーをしていたので、息抜きはサッカーだったんだと思います。でも普通の休日を過ごしていた訳ではなく、常に音楽に打ち込んでいました。ただただ音楽を続けていたんです。僅かな睡眠で、朝の3時や4時まで音楽を作っていたんです。本当にびっくりですよ。
ボブ・マーリーとマルコムX、2人のアプローチの違いなどは?
アクセントやしぐさは当然、2人とも違います。それに、マルコムXとの大きな違いで言えば、ボブにとっては音楽が大きな部分を占めていました。だから、ギターを習ったり歌を歌ったり、ミュージシャンになるとはどういうことなのか、良いミュージシャンとは何なのかを理解することにも力を注ぎました。
ギターの経験はあったのですか?
初めてです。基本的なことを身につけるのも大変な作業で、何か月もかかりました。ただひたすら続けるしかなかった。でもとても楽しかった。歌うのは得意ではないけれど、歌うのは大好きですし、なんといっても気分が良いですしね。
ボブ・マーリーのアクセントも見事でした。
ありがとうございます。とにかく彼の話をたくさん聞きました。ボブの娘セデラが、彼のインタビュー動画をたくさん送ってくれて、特徴を掴むために繰り返し聞きました。ある意味、私の英語とは、もう全く違う言語ですよ。でもボブの話し方のリズムや表現方法を習得することが大切だと思いましたね。それが“彼の波に乗る方法”の一つでした。そのリズムの中で彼を見つけることができました。
映画のメインテーマは愛です。ボブ・マーリーの愛を通じて、観客に伝えたい思いはありますか?
愛にはたくさんの種類があると思います。ボブは音楽を通して、愛と世界平和を広める旅をしていました。ボブと仲間たちの関係、一般的な愛、自分自身への愛、音楽への愛、コミュニティへの愛、子どもたちへの愛、家族への愛、世界を見ることへの愛など。この映画を支えているのは、愛のさまざまな形を探し求めていることだと思います。私にとっては、それは内面的な探求でもありました。
読者の人々に聞いて欲しい、お勧めの曲があれば教えてください。
『So Jah Seh』です。映画の中には少ししか出てきませんが、最初のジャマイカでのコンサートでの『War』歌唱後に歌った曲です。もしかしたら多くの人がこの曲を知らないかもしれません。私も演じるまで知りませんでした。
『So Jah Seh』はファンクのような感じ。ファンクという言葉が適切かわかりませんが、メッセージはとても強い曲です。彼があのヴァイブスで曲を書けるのがただただ驚きです。
※ヴァイブス:テンションや気分が上がっている時や、その場の雰囲気が良い時に感覚的に使用する言葉。
最後に、キングズリーさんにとって演じることとは?そして、どうあり続けたいですか?
それは良い質問ですね。どう表現していいかわからないですが... まず、演技は私にとって...職業であり仕事。とっても幸運なことに、それが本当に自分の情熱を注げるものでした。だからこそ、いつまでもディテールへの拘りを持ち、そして真摯に取り組む俳優でありたいと思っています。
映画『ボブ・マーリー:ONE LOVE』
公開日:2024年5月17日(金)
監督:レイナルド・マーカス・グリーン
脚本:テレンス・ウィンター、フランク・E ・フラワーズ、ザック・ベイリン、レイナルド・マーカス・グリーン
出演:キングズリー・ベン=アディル、ラシャーナ・リンチ
原題:Bob Marley: One Love
配給:東和ピクチャーズ
全米公開:2024年2月14日