グッチ(GUCCI)の2025-26年秋冬コレクションが、イタリア・ミラノで発表された。
ファッションショーの直前にサバト・デ・サルノが退任し、クリエイティブ・ディレクター不在となった今季のグッチ。“ロッソ アンコーラ”と呼ばれる深い赤をキーカラーにしてきたサバト・デ・サルノ期とは一転、ダークグリーンに包まれた会場で、デザインチームによるコレクションが発表された。
メゾンの舵をきる人物がいないからこそ、今季はグッチの原点に立ち返るようなシーズンに。ウェア コレクションがスタートした1960年代後半から現代まで、メゾンのあらゆる時代を巡りながら、“古き良きグッチ”と“これからの新章”を繋ぐようなコレクションを展開していく。
大切にしたのは、「スプレッツァトゥーラ(sprezzatura)」と呼ばれるイタリア独特のスタイル。“完璧さの中にある意図的な抜け感”や“計算された自然体”を意味するこの言葉は、メゾンの創設以来、グッチの中心にありつづけてきた美学だ。ファーストルックがその好例で、ボリューミーなファージャケットから“見せブラ”することで抜け感を演出。このほかにも、フォーマルなスーツにシアーなインナーを組み合わせたり、キャップでカジュアルダウンしたりと、あえて“外し”を効かせたルックが散見された。
ウィメンズは、シャープかつ洗練されたシルエットが基本。コンパクトなショートジャケットやペンシルスカート、超ミニ丈のワンピースなどでスリムな印象に仕上げた。一見堅苦しくも思われるかっちりとしたフォルムだが、色合わせの妙によって遊びをプラス。パープルのカラータイツやレトロな色合いのバッグをセレクトし“スプレッツァトゥーラ”した。
メンズも同様に端正なシルエットが基調だが、アイテムはテーラードに全振り。ピークドラペルのダブルジャケットに細身のタックパンツを合わせたルックが繰り返し提案された。時折、リラクシングなスラックスや、タイドアップしないタートルネックのインナーを差し込み抑揚をプラス。パステルカラー1色のみでまとめたスタイリングも目を惹いた。
意表をつく素材使いにも注目したい。ブラッシュモヘアのシャツやコーティングが施されたウール、ボンディング加工のブークレといった斬新な素材は、柔らかさと硬さのコントラストを生み出しながら、随所で個性を発揮。とりわけアイコニックだったのが、マザー・オブ・パールのように幻想的に艶めくレザー。コートやスカートに姿を変えながら、コレクションに華やかなエレガンスをもたらしていた。
60年代を象徴する構築的なミニドレスから、90年代のトム・フォード期を彷彿とさせるランジェリーライクなトップスやボディスーツ、アレッサンドロ・ミケーレ期の“ウルトラ マキシマリズム”を思わせるロング丈のファーコートのルックまで、そのすべてを結び付けているのが、グッチのアイコンの1つである“ホースビット”だ。大小さまざまなサイズのホースビットがジュエリーのように昇華され、ベルトやシューズに煌めきを添えた。
コレクションを彩るバッグにも、ホースビットの存在感が光る。ゆったりとしたシルエットに大型のホースビット ハンドルを備えたショルダーバッグや、ハーフ ホースビットのクラスプで開閉する新作バッグ「グッチ シエナ(Siena)」が登場。また、2025年で誕生70周年を迎える「グッチ ホースビット 1955」は、ソフトな構造へと進化して新登場した。