2015年3月6日(金)より、映画『妻への家路』がTOHOシネマズ シャンテ他で順次、全国ロードショー。
映画『初恋のきた道』や『紅いコーリャン』で知られる、巨匠チャン・イーモウ監督の最新作となる本作は、1970年代の中国を舞台にした愛の物語だ。主演には映画『シャンハイ』で知られるコン・リーが抜擢。記憶障害を抱える妻という、難しい役柄を見事に演じ切っている。
今回、チャン・イーモウが今作について、製作秘話や主題について語った。また、惜しまれつつ亡くなった高倉健が今作を観ていたということについても話してくれた。
監禁されるようになる前の描写は、主人公の20代の時の話で、主演のチェン・ダオミンは50代ですから、こんな若い人物を演じることは無理です。役者を変えてしまうと、まるで別々の映画になってしまうので、諦めました。私は小説の結末・エピローグを映画の始まりにして、小説全体の歴史的背景を登場人物の細部とセリフに凝縮させました。いわゆる「一滴から太陽が見える」という中国式美学で、控えめで含蓄のある境地――つまり最も難しい形の映画作りを選んだのです。
今回は脚本の段階から、勿論現場でもですが、コン・リーが色々な意見を出してくれました。例えば、毎回毎回駅に迎えに行くたびに妻が持っていく夫の名前が書かれた看板は、実は脚本には無かったんですが、コン・リーが「こういう風に夫の名前を書いた看板を持っていったらどうかしら」といったので取り入れたんです。彼女が自分で夫の字を書くわけですよね、で、雨にぬれて書きなおす。そうすると、既に病状は進んでいるので、夫の名前を思い出せない、あるいは字を思い出せない。というように、彼女が提案してくれた看板というものだけで、いろいろな事が表現できて、その人物を描くことができるので、本当にいいアイデアだったと思います。
実は一昨年、この映画を撮る前に「今度、こういう文革を背景にしたある家庭の話しを撮るんだけれども、きっとお好きな映画だと思いますよ」と高倉さんに手紙に書いたんです。私はこの映画を高倉さんに観ていただけていないと思っていたんですが、共通の友人から「実は高倉さん、『妻への家路』を観ていたんだよ」と聞きました。映画を観終った後、暫く黙っていて、一言、「ついにイーモウは自分の一番よく知っている、一番得意な映画を撮ることができたね。」と言ったそうです。高倉さんは本当にひととなりが素晴らしく、昔堅気な人だったと思います。今はなかなかそういう人はいません。高倉さんは私が最も尊敬する人です。
実際に文化大革命という歴史的背景は日本人の皆さんはそれほど理解できていなくてもいいと思うんです。中国の若い人も同じです。この映画はどの時代に起こってもいい話だと思うんです。一つの世代の、あるいは親と子の世代の、そして夫婦の愛情。それが核心のストーリーなので、そのストーリーと登場人物の感情、人間そのもの、そこにスポットを当てて描くことで、いつの時代の、どの国でもみることのできる作品として作り上げました。
【ストーリー】
1977年、文化大革命が終結。20年ぶりに解放された陸焉識(ルー・イエンシー/チャオ・ダオミン)は妻の馮婉玉(フォン・ワンイー/コン・リー)と再会するが、待ちすぎた妻は心労のあまり記憶障害となり、現在の夫を別人として認識してしまう。焉識は他人として向かいの家に住み、娘の丹丹(タンタン/チャン・ホエウェン)の助けを借りながら、妻に思い出してもらおうと奮闘する。収容所で書き溜めた何百通もの妻への手紙をくる日も彼女に読み聞かせ、帰らぬ夫を駅に迎えにいく彼女に寄りそう。夫の隣で、ひたすら夫の帰りを待ち続ける婉玉。果たして、彼女の記憶が戻る日は来るのか─。
【映画情報】
『妻への家路』
公開日:2015年3月6日(金) TOHOシネマズ シャンテほか全国ロードショー
出演:チェン・ダオミン、コン・リー、チャン・ホエウェン
原題:『歸来』(英題Coming Home)
監督:チャン・イーモウ
脚本:ヅォウ・ジンジー
配給:ギャガ
上映時間:1時間50分
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