いつもより色気を抑えたリラックスしたテーラードスタイル――ジョルジオ アルマーニ(Giorgio Armani)の2015-16年秋冬コレクションを一言で形容するとこうなる。また、2体同時に見せる演出はアルマーニの十八番だが、男女のアイテム、テキスタイル、シルエットに共通項を持たせることで、今シーズンのパリ・ミラノの最大のトレンドである“男女のシェア”を自然に表現している。
ジャケットは、肩が内側に入ったタイト&コンパクトなシルエットだ。それでも素材が柔らかく上質なので、堅苦しさとは無縁。シンプルなシングル3つボタンのアンコンタイプ、カーディガンのようなラグランスリーブのダブルブレスト、パイピングを施したスタンドカラーの変則ダブルブレスト、ノーカラーの3つボタンジャケットなど、バリエーションの豊かさは相変わらずだ。
パンツは腰回りゆったり、裾幅細めのキャロットシルエット(昔のボンタンのような)がメイン。股上は深めで、サルエルとトラウザーの中間のようなリラックス感のあるラインだ。裾は長めに仕上げ、敢えてシワ感を楽しむような提案も新鮮に映る。
ベストやカーディガンの胸元は、相変わらずインナーなしで直接素肌を露出している。しかし、全体的に身体に沿うシルエットながら全体的に丸く柔らかい雰囲気だから、むせ返るような色気とは無縁である。自身のアイコンを守りつつ、時代に寄せて行く手腕は流石の一言だ。
後半のフォーマルルックもミニマルでリラックスした雰囲気。4つボタンのスーツはボタンを比翼仕立てにしていて、装飾を極限まで排除。短かめの着丈のタキシードジャケットには、一番の上のボタンまで止めたノータイの白シャツとキャロットシルエットのパンツを合わせることで、フォーマルの堅苦しさを中和している。
カラーパレットはグレー、ネイビー、ブラック、ブラウンを基調に、ベージュ、ワインレッドを挿し色に使っている。素材はシャギー、ツイード、ニットなど起毛感のあるものを多く揃えた。
靴は編み上げのモンキーブーツが主役。トルコのコーヒーショップの店主が被っていそうなレザーのキャップ、大きめのレザーバッグ、首もとに表情を加えるネックウォーマーも、スタイリングを彩る役割を果たしている。
Text by Kaijiro Masuda(Fashion Journalist)