リック・オウエンス(Rick Owens) 2015-16年秋冬メンズコレクションは、軍事潜水艦を舞台としたフランスの白黒映画がインスピレーションの源。深海という極度のプレッシャーに囲まれた状況で、理性を保とうとする様子が、今回のテーマ“COMPRESSHION(圧縮)”に繋がったのかもしれない。
メッセージを感じずにはいられないテーマ設定の通り、ワードローブにも潜水艦のイメージが色濃く反映。船員が着用していたような、ピーコートとケーブルニットセーターにこだわり、あらゆる角度から焦点が当てられている。
ショーの前半を彩るピーコートには、ベルベル人手織りのウールブランケットを、特別に染め上げた生地を採用。ストンと落ちるシルエットやフィット感のあるシェイプ、はたまたフレアシェイプなど様々な表情をみせる。赤茶色に汚されたようなコートは、潜水艦の錆をイメージ。腐食が避けられない絶望的な状況が想像できるようなアイテムだ。
ターボケーブルセーターは、分厚くも軽やかなシルクとカシミヤの混紡素材を使用。イタリアで手編みされたニットは、幾何学的な編み目とボディに寄り添うようなシルエットで脱構築的なフォルムを演出した。
時が進むにつれて、徐々に変容していくコレクション。テーラードの端正な美しさから始まりながら、上下を逆さまにコーディネートされたコートをケープとして羽織ったり、フルレングスのニットの鼠蹊部に穴をあけたアイテムを用いるなど、奇想天外な遊び心を展開していく。
芸術性を感じる装飾も散見。スプレマティストの運動を感じされるような刺繍とスパンコールで表された直線のモチーフは、試行錯誤の末、秩序を保とうとするも失敗した動きが見て取れるようだ。