2015年3月5日(木)にパリファッションウィークで発表された、アン ドゥムルメステール(ANN DEMEULEMEESTER)の2015-16年秋冬コレクション。
ショーを振り返ると、会場に響いた黒板をひっかくようなキィーという音を思い出す。今季はそんな音と連動するようなストライプから、スタートした。ぐっと力を込めた爪の動きに添うように、先端は濃く太く、末端は消えかけるような模様。それらは、ワイドパンツの全面に配されたり、コートの前身頃に部分的にあしらわれたりと、繰り返し登場した。
特筆すべきなのは、太いベルトだろう。昨シーズンを思い起こさせる細い紐とジップを組み合わせ、鎧のようにがっちりとウエストを守っている。これにより、時折差し込まれる柔らかな素材のトップスも、全体の波長に合うのだ。また細みのベルトで、羽織のようなウエアをたくし上げ、たっぷりとした生地がウエストラインを飾るルックもあった。
モノトーンを基調にショーが進行していくなか、意表を突いたのは真っ赤なドレス。ストンと落ち感のあるシルエット、とろけるように揺れる生地……。ずっと貯めこんできた美しさが放たれるように、明るさと開放感をもたらす。
ぱっと見ると、退廃的といったワードが頭に浮かぶかもしれない。しかし、アシンメトリーな独自のバランス感覚であったり、胸元にあしらわれたカッティングやバックスタイルで見られるクロスストラップなど、女性らしいエッセンスに気付くと、デザイナーの繊細な内面性が映し出されている気がしてならないのだ。