ラッド ミュージシャン(LAD MUSICIAN)2011年春夏コレクションのインスピレーション源は、オスカー・ワイルドの小説 「ドリアン・グレイの肖像」。「快楽主義」「デカダンス」「Eternal Youth(永遠の若さ)」をキーワードに、「洗練の後の退廃」というテーマをモダンに表現した。
小説の舞台となる19世紀末のイギリス貴族の雰囲気を伝える、ボタンやカフス、リボンタイや輝くファスナー等、クラシックな装飾がポイントのアイテムが登場。主人公に様々な影響を与えたとされるデカダンス小説「さかしま」を象徴するカラー、「Orange Wall」をキーカラーに、DEAD ROSE、FLAMINGO、WINE RED、MIDNIGHT BLACK、BLACK LEAFと名づけられたカラーパレットがシックで気品あふれる世界を表現している。
ナチュラルコーンケープド・ショルダー(肩のラインがゆるやかにカーブし、肩先が少し立ち上がったデザイン)のダブルジャケットやフォーマルなチェスターコート、くるぶし丈のボトムをまとうモデル達は、美しく気高いドリアン卿を現代に甦らせたよう。
ドクロが隠された小花柄や、金紙を施して繊細に創り込まれたチェック地、星をモチーフにした幾何学模様のカット&ソー、ギュスターヴ・モローの絵画「サロメ」からインスパイアされたタトゥーマンダラが、繊細かつエキセントリックな青年の内面を映し出している。エポーレット(肩章)付きのトレンチコート、スタンドブルゾン、MA-1(フライトジャケット)等、ミリタリーテイストでエッジを効かせたアイテムも印象的。ライダースジャケットは、2カ所から開閉し風を取り入れ、レイヤードも可能という、ラッドらしいこだわりのデザインだ。
ショーの合間に現れる、蒼白のモデルの顔に施されたメタルシルバーのペイントが、徐々に2面性の人格へと蝕んでいく。永遠の美貌を求めて悪魔に魂を売った青年が、快楽と背徳に溺れ退廃していく様を見事に落とし込んだコレクションは、耽美な余韻を残して幕を閉じた。