ディオール オム(DIOR HOMME)は、2016年夏コレクションで、テーラードとのミリタリーを融合させた都会的な男性像を描いた。キーワードとなっているのが、1.細身のテーラードスーツ、2.迷彩柄などのミリタリーのモチーフ、3.機能とデザイン性を兼ねたジッパー使い、4.アーガイルのモチーフ、5.白バラの刺繍――の5つ。ミリタリーの男らしい要素を、ディオールのエレガンスのなかに上手く溶け込ませている。
ファーストルックは、ネイビーのスリーピースをタイドアップした正統派のスーツスタイル。しかしよく見るとジャケットの裏地は迷彩柄になっていて、ベストのボタンは比翼仕立でボタンが隠れている。足元のラバーソールのダブルモンクストラップシューズは、甲の部分にジッパーを2つ配している。
ミリタリーのモチーフはコレクションを通して見られるが、なかでも目立つのが迷彩柄のアイテム。ジャケットやコートの裏地や、シャツ、細みのパンツ、ネクタイ、クラッチバッグ、迷彩の生地をアーガイル柄風に貼り付けたニットベストなど、様々なアイテムに落とし込んでいる。パンツは全体的に細みだが、大小6つものポケットが付いたウール素材の軍パンもある。
5ポケットパンツやジャケットのジッパー使いもユニーク。プレーンな2つボタンシングルのジャケットの左胸には、6つものジッパーを配置。ビジネスマンがパンクに変身したような、真面目と遊びのバランス感覚に優れた1着だ。
カラーパレットはネイビー、グレー、ホワイト、迷彩のオリーブとベージュ、オレンジなど。靴はジッパーを配したダブルモンクストラップ、マウンテンブーツの甲のデザインをサンプリングしたレザーシューズの他、かつてクリスの名声を高めるきっかけとなったジャーマントレーナー(ドイツ軍のトレーニング用スニーカー)を久しぶりに提案している。首にかけたり手に持ったボウリングのピンのようなアクセサリーは、アメリカの陶芸家、KRISTIN MCKIRDYの手によるもので、ディオールのラッキーチャームが彫刻されている。
後半には白バラをあしらったアイテムが登場。胸ポケットの部分の刺繍が上品なネイビージャケット、和のスカジャンのようにも見える袖に刺繍を施したMA-1などでショーを締めくくった。
TEXT by Kaijiro Masuda(FASHION JOURNALIST)