吉川が注目を集める、一つのきっかけとなったのは「艶肌」の提唱だ。その当時の主流は、パウダーファンデーション。崩れにくさやテカリにくさを多くの女性たちは追い求めていた。
それまでは「艶」という概念が、(コスメ業界のトレンドとして)全くありませんでした。でも僕は、生き物としてのセクシーさを艶の質感に感じて、人間が作り出す汗や涙、肌の質感がセクシーというところに行きつきました。
最初にニューヨークで艶肌メイクをしたときは、今までにない“新しいメイク”ということで多くの取材を受けました。それによって、知名度もあげることができたんですよね。誰かが絶対見て気が付くんですよ、「わー!すごい、見たことない」って。そうすると、それがあっという間に広まっていくんです。
自分がやっていることすべてが最先端。人のスタイルに気を遣わず、自分が綺麗だと思うこと、興味があることをもっと自由にやっていける環境でした。
一番大切なのは、自分が自分に正直に、綺麗だと思ったこと、それを恥ずかしげもなくやること。人からかっこいい、オシャレっていわれるんじゃないかって、気にしているうちはだめなんですね、正直にならないと。
ただ、日本で艶肌を紹介したときは、テカリと勘違いされました。その頃(2000年頃)の日本には、艶肌文化が全くなく、(パウダーファンデーションで仕上げた)粉文化だったんです。艶肌の魅力を理解してもらうのには、かなり時間がかかりました。
国内最大級の新ショップを銀座三越にオープン。
白を基調とした店内にはブランドイメージを投影し、スワロフスキーを使用した「クリスタル・アプローズ」を飾った。
撮影現場にいくと、テーマを言われるんです。例えば、「今日は60年代風で」とかね。人によっては資料もくれて、こんな感じでって説明してくれる。そこで、そのとき思ったことをやるだけです。モデルともそのタイミングで初めて会うんですよ。
もちろん。どういう風に変身させるにしても、ポイントは、その人らしさを尊重すること。例えば、(ファッション雑誌のカバーを広げて)こういうメイクも特殊だけど、デザインだけが先行しないで、その人の顔とすべてが似合っていることが大切です。
撮影には、毎回いろんなモデルが来るんですけど、自分がどういう風に見せたいなって考えつつも、必ずその人が魅力的に見えることをポイントにしています。
そう?自分が綺麗なときってうきうきするでしょ。綺麗な人をみたときはどう?それを自分に感じればいいんだと思います。「あ、いいかも」って思うこと。そう思えたら、すごいいいんじゃない?
それに可愛さって、いろんな可愛さがあるじゃない。その可愛らしいさを自分で想像できることも重要です。そもそも綺麗っていうものが一つしかないと、メイクしてても、そこを目指すしかなくなっちゃう。そして美しさも一つじゃない。一人ひとり異なるし、その人のムードもあると思います。
女性のセクシーさは口元に現れると吉川は語る。
メイクアップテクニックや彼の美意識は、2015年10月26日(月)に発売される
新刊『褒められて嬉しくなる キレイの引き出し方』でも紹介している。
例えば、すごく幸せなときもいいかもしれないけど、ちょっと不幸なときも他人から見ると綺麗なときもある。いろんな綺麗さがあるよねって、自分の中で思うことが重要なんじゃないかな。
よくあるのは、どの写真を撮っても、同じ表情する人っているじゃない?そういうのってつまんない。そういうのが好きな男性もいると思いますけど。でも、普段あんなに面白い子なのに、なんでどの顔も同じにするんだろうって疑問だな。もっともっと奇想天外な方が、相手は喜ぶよね。
想像力が足りないかな。可愛さってこれだよねっていうステレオタイプしかない気がします。そういうんじゃなくて、いろんな人がいろんなものがかわいいよねって思うと、もっともっとみんなが綺麗になる可能性があるなって思います。
その人それぞれの個性。(ニューヨークで)僕自身は、美しさを表現しなければならず、その人それぞれの魅力を感じて、メイクをする必要がありました。(そんな環境の中で)一人一人の美しさを発見することができたんです。
時代の空気感と移りゆく美の価値観を感じることですね。