kolor(カラー)は2016-17年秋冬コレクションを、フランス・パリで発表した。キーワードは、①60年代のロックスター(とくにイギリス)②ヨーロッパの高級素材③ミリタリー④50年代のアメリカーーの4つ。ロックスターの残像を取り入れつつ、カシミアなどの高級素材を様々なアイデアで調理し、旧き良き時代のヨーロッパをアップデートさせている。
まず、目に飛び込んでくるのは、ミュージシャンを連想させる佇まいだ。モッズ的なボックスシルエットのガンクラブチェックのスーツは、緩やかなウェーブのセミロングの髪型も相まって、音の匂いがぷんぷんする。でも、パンツは膝の部分にはバイカーパンツのようにマチが入っていて、一筋縄ではない。派手になりがちな銀糸や金糸を織り込んだランダムボーダーのコートやジャケットも、ギラツキ感は皆無。ヒョウ柄のソックスと合わせても飄々と見えるのは、このブランドならではの持ち味だ。
また、kolorといえば、産業資材などの意外性のある素材使いが思い浮かぶが、今回は分かりやすいラグジュアリー素材を多用。カシミア、リアルファー、ベルベット、カセンティーノ(毛玉加工)のウールといったヨーロッパ文化の高級素材を、引き算と足し算の妙で、変化球のラグジュアリーに昇華させている。ラペルの下部が別色になったカシミアのジャケットは、カーディガンのように軽やかで、アラスカンと思われるリアルファーのパッチワークジャケットさえも、なぜだかカジュアルに見える。前回に引き続き、アーミージャケットなどのミリタリーの要素も取り入れている。
一方で、アメリカのモチーフが散見するのが面白い。ヒョウ柄のデコレート付のオンブレーチェックのブルゾン、スウェードとエナメルのコンビネーションのバンプシューズ、ワイドシルエットのパンツなどは、50年代の雰囲気で、ゴダールの映画に出てくるアメ車のように絶妙なスパイスになっている(当時のヨーロッパはアメリカ文化に対する強い憧れがあった)。阿部の編集力の高さが遺憾なく発揮されたコレクションだった。
TEXT by Kaijiro Masuda(FASHION JOURNALIST)