ネ・ネット(Né-net)が、「African Mix」をテーマに2016-17年秋冬コレクションを発表した。コレクションのインスピレーション源となったのは、アフリカでは精霊の木ともいわれる“バオバブの木”。
上下逆さ向きのような珍しい形をしたこの木には逸話がある。はるか昔、地球上で一番最初の木と言われた彼らは次々に誕生する新しいものを取り入れたくて神様にお願いした。ヤシの木のように「スレンダーになりたい」とか、実のなる木をみて「実を付けたい」だとか。そんなわがままに怒った神様は、彼らを引っこ抜いて逆さにしてしまったという。
この話は、ミックスすることで新しい価値を作ってきた人間に似ている、と言うデザイナーの髙島一精。しかしその中で、自分の持って生まれた素直な感覚は大切にしなければならないともいう。なぜなら「それはいつでも、どんな世の中でも不変なもので、刻々と変わる世の中の変化に対応する力であり、そうすることで自然に新しい道が開けてくるだろう」と考えるから。
“バオバブの木”が生まれ育ったアフリカをベースにしながら、いろんな国々に焦点を当てて新鮮味のある洋服を提案。アフリカのカンガをイメージしたテキスタイルには、カリブの海賊たちの姿。涼しげなリネンのシャツには刺繍で浮かび上がった“バオバブの木”が凛と立っているし、ブラウスでは、超音波カットによって象られた精霊たちが幸せな笑顔を振りまいている。一方アメリカの要素をミックスしたものには、アフリカの壁画のようなモチーフが、アメリカンキルトをイメージしたジャガードで表現された。
表現する世界は広く、ヨーロッパや北欧の雰囲気もあった。北欧のテキスタイルによく見る大柄のプリント、雪の中で見た青や赤のオーロラを想起させる染め、アンティークの壁紙のようなクラシカルな模様には犬のモチーフが。手作りのアクセサリーを腰や首に巻くことで民族的な要素も含ませた。そんなスタイリングの中に、タートルネックを重ねているのは新たな見せ方のひとつ。シルエットはいつも以上にリラックスムードだからか、ときには白鳥が肩で羽を休ませることも…。
そうやって、色んなことをしているのにネ・ネットらしいほっこりしたムードは変わらない。新しいものを取り入れながらも髙島自身が自分の感性を信じてシンプルに魅せることをしているからだろうか。そしてそれは、きっと長年に渡って変わることのなかった“バオバブの木”も同じ。そんな彼らを戻してあげよう。神様にそっと囁くようなコレクションが完成した。