移動中に見つけた傘屋「コシラエル(Coci la elle)」(江東区三好2-3-2)。MOTスポットの一つでもある。外国の雑貨店のような可愛らしい店の軒下でもアート作品を見つけた。一つの言葉から連鎖して思考を広げる、石塚まこの《反転する視点》だ。
傘屋さんのウィンドウということもあり、作品のテーマは傘や雨。「雨の日をいかに楽しく、ハレの日にするか」というキーワードをもとにした思考の地図は、「交通整理」「自分の気持ち」「リオデジャネイロ」と、想像の範囲を超えて飛躍する。
<梢's voice>
傘がとても可愛いかったので友人のプレゼントとして購入しました。アート鑑賞後、ショッピングできる場所だとまた違った楽しみ方がありますね。一生懸命作品の説明をしてくれた店員さんも印象に残っています。
傘屋「コシラエル(Coci la elle)」から歩みを進めて深川資料館通りへ。深川の歴史が学べる深川江戸資料館からまっすぐ伸びるこの通りには、人々の生活に根差した小さな商店が多い。
中でも”おしゃべり”な店主が店を構える「御菓子司 双葉(江東区白河2-2-13)」は人気だ。昔ながらの菓子店のウィンドウにも「コシラエル(Coci la elle)」同様に思考の地図が広がっている。お店の中心となる「和菓子」のキーワードから色々なアイデアが連鎖。”おしゃべり”な店主が作家に話しかけ、そこから生まれた地図は、先程と比べて文章のような長いキーワードが多い。
「御菓子司 双葉」の隣、不動産屋の「株式会社 スタートライン(江東区白河2-2-1)」の窓も、石塚まこの作品で彩られている。スタートは「物件」。ここから広がった思考の地図は、どこから読んでも面白い。
<梢's voice>
御菓子司 双葉の窓で「相撲」という単語を見つけました!同じ作家さんでも作品の出来上がりに違いがありますね、じっくり鑑賞できるものは面白い。
御菓子司 双葉&株式会社 スタートラインにほど近い、「MOTスペースD(江東区三好2-15-3)」では、日本家屋を題材にしたインスタレーションが行われている。
このエリアは集合住宅や木造家屋がたくさんあった場所。しかし、関東大震災や東京大空襲で多くの家屋は喪失し、関連する図面や資料もなくなった。作家の鎌田友介は、当時この地域に住んでいた人々を訪ねて「家の記憶」を探った。住んでいた家や大空襲時の疎開先などの間取りを描いてもらい、それをもとに木を組んで家の骨組みを再構成。
インスタレーションの間には、モニターが設けられインタビューの映像や図面・間取りを書く姿も映し出され、横の壁面では、東京大空襲の被害図なども展示されている。
<梢's voice>
私の実家は、関東大震災や東京大空襲の被害地のど真ん中。幼稚園の時、東京大空襲の人形劇を見たりみんなですいとんを食べた記憶があります。また実家の横が慰霊堂なので、当時焼失したものが飾ってあるお堂があり、幼い頃に訪ねたこともあります。大震災や空襲に関して予備知識があったので、違った面から作品を鑑賞できたのが良かったなと思います。
Q.まずは「MOTサテライト」を巡ってみていかがでしたか。
地域に基づいている作品が多かったなって思いました。それぞれの作家さんがここでやる意味を制作に取り入れてらっしゃるのを感じました。初めて訪れる人はもちろん、地元の人が、地域と作品との繋がりを見つけたりして、地域の人もより楽しめるんじゃないかな。
まちの人がこのイベントを通してどんどんまちを好きになり、盛り上げていく形になれば、地域活性にもなるだろうし素晴らしいですよね。
展示作品だけでなくまち全体に気付きがあるので、食べ歩きしながら「MOTサテライト」を巡って、まち歩きをするのが私のオススメです。
Q.清澄白河をまち歩きしてみていかがでしたか。
私の地元と同じように、清澄白河には独特の雰囲気がある。自分の生まれた錦糸町と街並みが似ていて、懐かしいなという気分になりました。東日本大震災のチャリティー人形がほぼ全ての商店街のお店に置かれていたり、地域の人が助け合って暮らしているところがこのまちのいいところかな。
私も小さい頃、近所のおばさんが面倒を見てくれたり、「危ないわよ」って教えてくれたり、そういう関わりの中過ごしていたので。今もそういう関係性って変わっていないんだなって嬉しくなりました。