東京の下町エリア・清澄白河で、まちぐるみのアート・プロジェクト「MOT(モット)サテライト 2017秋 むすぶ風景」が開催。2017年11月12日(日)までの木、金、土、日曜、祝日に菓子店やコーヒーショップ、店舗跡地などが会場となり、アート展示やワークショップなどを行っている。
清澄白河からほど近い墨田区で生まれたモデル・秋元梢。地元の錦糸町から東京都現代美術館の前へと伸びる三ツ目通りは“初めて覚えた通り”といってもよいほど馴染みがあるが、意外にも清澄白河をゆっくりと散策するのは初めて。そんな秋元梢と一緒に「MOTサテライト」に参加し、清澄白河を巡ってみた。
東京・江東区にある清澄白河―江戸時代より水運のまちとして栄え、古くは松尾芭蕉が居を構えたという歴史ある地域だ。明治以降は物流の拠点・倉庫街として機能し発展していったが、関東大震災、東京大空襲により一変。古い建物の多くは焼けてしまった。
現在、倉庫をリノベーションしたギャラリーが多く移転している。2015年には、アメリカの人気コーヒーショップ「ブルーボトルコーヒー」日本1号店がオープン。これを皮切りに、注目のショップが続々と集まり”カフェの街”としても進化を遂げている。
「東京都現代美術館」は1995年の開館以来、クリエイティブな活動をしてきた“街のシンボル”的存在だ。現在改修休館中だが、近隣の施設と人々の協力を得て、施設を飛び出し「MOTサテライト」を企画した。
会場となるのは、清澄白河エリアにある6ヶ所の“MOTスペース”と、9ヶ所の“MOTスポット”。また、東京藝術大学上野キャンパス内アーツ・アンド・サイエンス・ラボでも展示やイベントを行う。
清澄白河では、工場や店舗の跡地、そして営業中の和菓子店やコーヒーショップ等が展示スペースとなる。参加するのは、国内外で活躍する現代美術作家たちとさまざまな領域で活躍する研究者たちだ。今回は、まちの営みの背景や、まちの歴史的変化の軌跡をたどることをテーマとして、インスタレーションを展開している。
また開催期間中には、“地域パートナー”と呼ばれる、清澄白河のギャラリーや文化施設、ショップなどでも、独自のプログラムが行われる。
秋元梢と「MOTサテライト」を訪れ、お気に入りのアートを探した。まちの軌跡がわかる作品から思わず写真に収めたくなるフォトジェニックなエリアまで、見つけた注目スポットを紹介する。
始めに訪れたのは、東京都現代美術館にほど近い「MOTスペースC(江東区三好3-4-7)」。元は喫茶店だったこの場所で行われているのは、街の電気店や美容室、理髪店、パン屋など、人々の生活を支える店の看板にフォーカスした「のらもじ発見プロジェクト」だ。
古い看板の文字を採取&分析しフォント化。それらを「のらもじ」と名付け、再発見するプロジェクトだ。今回は、清澄白河で再発見された「チューリップ」フォントを含め、魅力あるのらもじたちを白いTシャツの上でインスタレーションとして蘇らせた。Tシャツの上に浮かび上がる「クロワッサン」や「あ!」など、独特のセンスで選ばれた単語は、表示されるだけでなく、アニメーションとなって動き回る。
壁面では、ベースとなった看板やお店の紹介から、どうやって文字へと蘇らせたのか、思い出の部分も紹介。次世代へ繋ぎたい…そんな気持ちも反映されたプリントTシャツの後ろに回りこめば、まるで試着したみたいに記念写真も撮れる。
<梢's voice>
私も『秋元梢』と自分の名前をタイトルにした書籍を作った際、オリジナルのフォントを作ってもらいました。
お店の看板は、友達が「この看板可愛い」ってインスタグラムに写真をアップしているのをよく見ます。看板は意外と身近な存在で、のらもじ発見プロジェクトは、私たちの生活に馴染みやすいものだと感じました。私は、「シミズデンキ」の書体が好みかな。丸文字っぽいものや漫画タッチの書体など、それぞれに味があっていいなと思います。
清澄庭園に向けて足を進めると、ドアなどを作る建具屋倉庫の跡地に構えた「MOTスペースE(江東区三好2-2-5)」に到着した。ここでは、かつて水路が張り巡らされていた木場としてのまちの歴史に迫った、Atsuko Nakamuraの作品を紹介している。昔、水辺や水路だった場所を調べて訪ね、そこで聞こえてくる風や振動など、全178ヶ所の周辺音を記録した。録音した音は、水をはった器に聞かせ、インクを垂らしその上に木材をのせて、水の運動を写し取る。
入り口を入るとすぐに、何種類かの青いインクを纏った、天に上る龍のような迫力ある作品に出会う。作品を通して木場というまちの歴史と記憶に触れることができるはずだ。週末には、向かいの倉庫でブックカバーやしおりが作れるワークショップも企画されていた。
<梢's voice>
ワークショップいいですね!参加型の企画があるとより展示を楽しめると思います。私も、美術展だけだとなかなか足を運びづらいですが、小物が作れる企画があれば違った気持ちで楽しめる。見るだけじゃなく、自分の体験したことを来場者にも体験して欲しいっていう作家さんの意図も感じられました。