ハナエモリ マニュスクリ(Hanae Mori manuscrit)の2018年春夏コレクションが、東京・表参道ヒルズで2017年10月19日(木)に発表された。
「Flux」をテーマにした今季。流道、流転、絶え間なく流れ続けるというという意味を持つこの言葉を、デザイナーの天津憂は、自身のブランドにはぴたりと当てはまるという。彼はランウェイの上で、このテーマに沿う2つのシーンをみせてくれた。
ひとつめは、序盤に現れたスタイル。ハナエモリ マニュスクリらしからぬ“物静かな”ルックが目立ったように感じる。裾がほんのり揺らぐサマーツイードのスカート、幾重かに重ねた細いベルトで絞めるシアーな素材のワンピース。際立つ色柄はほとんどなく、ドレープやギャザーがメインの装飾で、特徴的だったのは、ベルトや肩まで垂れ下がった大きなイヤーアクセサリーだ。流れるような落ち感のファブリックを背景にしたそれらは、今シーズンの「Flux」を語るにふさわしい。
なぜなら、重力に逆らわずに落ちるフリンジやタッセルのディテールは、歩けばまるでエレガンスを主張するかのように揺れるが、足を止めれば、ただまっすぐに存在する。おそらく、ベースとしている滑らかなテクスチャーの素材も、ドレープやギャザーによって流動性のある立体感が生まれるからこそ、選んだものだろう。
そして、次にふたつめのシーン。抽象的なグラフィック柄が投影される。リアルな花を銅板に写して、それをまるごと用いたという花柄は幻想的かつ魅惑的な印象を受ける。軽快な素材を用いているからか、さらに花という存在が現実的でなくなっている。一見、何模様か戸惑うほどの色柄が入り混じるテキスタイルは、よく見れば確かに花が咲き誇っている。そして、もちろんブランドのアイコン的存在である蝶の姿も見られる。
こうした2つのシーンから読み解いたのは、ブランドの永遠のテーマである「エレガンス」である。追い求める上で、なければいけない存在であった美しく咲き乱れる花々は、土にかえり、そしてまた新たに生命を宿す。これもまた「Flux」に通ずるのだろう。そして、輪廻転生のように生き続ける花々と共に生きる蝶たちも……。ブランドのアイデンティティーであり、またやはり欠かせない存在だと、ランウェイの上で強く感じさせられた。