まとふ(matohu)の2018年秋冬コレクションが、2018年3月20日(火)東京・渋谷ヒカリエにて発表された。
日本の美意識をコンセプトに2010年よりスタートしたシリーズ「日本の眼」は、今シーズンをもって完結。シリーズ最後のコレクションでは、終わりゆく物を最後まで慈しむ日本の心「なごり」をテーマに、時間の移ろいと季節の終わり、そして新たな始まりを感じさせるワードローブを展開した。
メインモチーフとなったのは、黄色く色づいたイチョウの葉や、紅葉したツツジ、木の実といった秋の植物たち。これらを抽象化し、まとふならではの色彩感覚でテキスタイルに落とし込む。イチョウの黄色は、緑から黄色に変わる中ほど、陽の光を透かしたような明るさ、十分に紅葉した深さなど、様々な色合いで表現されている。
太陽がまだ暖かい楽しい秋のワードローブに、次第に冷たい空気が入り込んでくる。メインカラーは、黄色から青やグレーへと変わり、冬が訪れたことを伝える。ところが、青のワンピースやコートには、黄色やオレンジのアイテムが組み合わされ、暖かな季節への“なごり”を想い続けている。
布地自体も、ウールの重厚感を感じさせるツイードやヘリンボーン、起毛素材といった温もりのある質感が主流。対して、服のシルエットやスタイリングは、シンプルで直線的。このようなデザインの選択にも、終わる物と生まれる物との対比が表れている。
コレクション終盤は、絹を一点一点ろうけつ染めした一際美しいテキスタイルが彩った。ブランドのコンセプトアイテム「長着」のほか、ノースリーブワンピースなどでも登場。布地は、冬の寒さのようなパープルから、春の気配を感じさせる桃色へとグラデーションに染められている。過ぎ去る季節への“なごり”と、新たに始まる季節への希望が表現された一着に仕上がっている。
なお、日本の美意識を抽象的な視点でファッションに落とし込んできた「日本の眼」シリーズを終えて、次シーズンからは、工芸や伝統といった文化とファッションを、より具体的な視点で繋げる試みに挑戦していくという。展覧会や映像など、ショーに限らない方法でもまとふの世界観が披露される予定だというので、今後の展開に期待したい。