ライカカメラとコラボレーションしたきっかけを教えてください。
ライカカメラ社の当時のセールス(現在マーケティング)のヘッドだったステファン・カイル氏と4,5年前に出会ってから、将来的に何かできたら、という話はしていました。けれど当時は、今回モデルとなった「ライカ M型カメラ」を誰かとコラボレートしようという戦略はなかった。
僕は長年「ライカ M型カメラ」のユーザーだったので、このモデルで何かをしたいという気持ちが強くて、忍耐強く待っていたんです(笑)そうしたら遂にチャンスが回ってきて、トントンと話が進んでコラボレーションが実現したんですよ。
既存に存在するライカカメラに対して、デザインをする難しさを教えてください。
完璧なモノに、機能を向上させたり、外観の美観を向上させることは決して容易ではありません。デザインを手掛ける上で、本当に微妙な一線が設けられていて。悪い例ですが、僕はホットピンクでグリッター付きのデザインも提案できたかもしれない。けれどそれだと、ライカファンは満足できませんよね。
僕は、もともと(ライカカメラの象徴的なデザインを手掛けた)オスカー・バルナックのビジョンに沿ったものを制作したいと考えていました。そしてライカファンからも「これはライカのものだ」と認識されるもの。これが一番チャレンジングなことでもありました。
それは、ウェアを手掛けるのとはまた違う感覚ですか?
服へのアプローチと一緒です。「ライカ M型カメラ」というのは、ライカカメラのアイコニックなモデル。つまり僕にとっては、ポケットが5つある代表的なデザインのファイブポケットジーンズみたいな存在です。
発光色デザインのインスピレーションを得たのは?
文字盤が光る腕時計からです。外観は同じだけど、夜に発光するほうが良いなって。むしろ何故今まで誰も思いつかなかったの?と思ったくらいです。オフィスでデザインに集中しているときにふとこの考えが降りてきました。
日頃からデザインを考えるときは、集中する時間を設けていらっしゃるんですか?
はい。僕の場合は、デザインはすごくダイレクトなものだと思っているので、集中すれば良いアイディアは降りてくるものだと考えています。あとは、たまには自分だけの時間を設けて気分をリラックスさせることも必要ですね。僕は子供が3人もいるから、なかなか時間を作ることは難しいけれど。
もし家族から離れて、自分の時間をとるとするなら飛行機の中とか。機内でペンとスケッチブックがあれば僕はデザインができる。ものすごく静かだし、スマートフォンも見る必要もありませんからね。スマートフォンってついつい見続けてしまうから、僕にとってクリエイティブなシーンでは全く助けにならないものなんです。
本当にデザインがお好きなんですね。
そうですね。でも、ファッションデザイナーになったことは未だに自分でも驚きです。僕はイギリスの私立の学校に通っていたから、金融とか堅実な道に進む同級生に囲まれていたし。
ただ、僕はもともと物事をみた時に、”何がうまくいっていないのか”という点に着目するタイプ。何かが正しい形で収まっていないと、違和感を覚えてしまうんです。それはカメラや、バッグ、腕時計、家のインテリアデザインも含めて。ハマっていないものをみると居ても立っても居られなくなる性分なんですよ。
そして特にデザインとなると、よりネガティブな面が目に付くので、どうやって問題解決していこうかと考える。だから、ファッションデザイナーという職業が向いていると思うし、なってよかったと思っています。