エルメネジルド ゼニア(Ermenegildo Zegna)の2019年春夏コレクションが、ミラノファッションウィークの初日2018年6月15日(金)に発表された。
会場は、有機的な曲線美を得意とする、ブラジルの天才建築家オスカー・ニーマイヤーによる建築が望める場所。そこに、エルメネジルド ゼニアのアイコンである「XXX」を描いたシルバーの橋を渡した。抽象的な線の組み合わせから成る「XXX」は、きっと彼の作品ともリンクするところがあるはずだ。
エルメネジルド ゼニア のクリエイティブディレクター アレッサンドロ・サルトリがこれまでも変わらず提案してきたトラディショナルかつラグジュアリーなブランドの美徳と、スポーティーやストリートなアイデアを掛け合わせるワードローブは、今季もまた飛躍の一途をたどった。
ラグジュアリーを感じられるのはやはりファブリックだ。なかでもレザーは、極薄かつなめらかで、パンチングされることにより、テクニカルなメッシュ素材にも見紛うほど。事実、ナイロンメッシュも登場しているが、その境界線はほぼない。また、従来なら温かみを感じられるニットは、圧縮したような加工で本来の柔らかさを残しながらもタフタのような硬質感を出し、近未来化させた。
ボトムスで特筆したいのはハイウエストダブルプリーツパンツ。シルエットが絶妙で、落ち感のある素材にはグッと中心に引き寄せるタックを入れることで、ワイドながらも足元までもたつかないきれいにラインに仕立てた。サイドに大きなポケットを配したミリタリー調のジョガーパンツは、シルキーなウール素材からレザーまで表情豊かに組み合わせている。
今季は、ストリート、あるいはスポーティな要素のふり幅が広い。ブリーチデニムはストリートの筆頭で、オーバーサイズのパーカーとのセットアップも打ち出した。また、スポーティーなもので言えばテニスプレーヤーを描いたプリントで、フルジップのシャツから端正なスーツに至るまでを彩っている。いつもならトラッドな印象のチェック柄には、爽やかなブルーのコントラスト、さらには目の覚めるようなイエローを織り交ぜたポップな演出も登場させている。
小物類は遊び心たっぷりに、それでいて高級感は少しも失っていない。糸を複雑に編み込んだスニーカー、艶やかなグログランテープで甲を覆うスポーツサンダル、アイコンが型押しされたサコッシュ、バイオレットのスエードを用いたサンバイザー、そしてまるで書類ケースをデフォルメしたようなクラッチバッグまで。
こうしてスポーティ、そしてストリートであるはずのワードローブはブランドが変わらず提示してきたラグジュアリーなフィルターを通すことで形を変えた。あるいはその逆もしかり。ラグジュアリーなものにサルトリのモダンな解釈が加わることで、オスカー・ニーマイヤーの作品と同じく唯一無二の存在感を放っている。