メゾン マルジェラ(Maison Margiela)のメンズ初となる「アーティザナル」コレクションが、フランス・パリで発表された。なお、同コレクションはメンズのオートクチュールコレクションにあたり、メンズのプレタポルテコレクションは2018年9月に発表される2019年春夏「デフィレ」ショーにて発表される。
2018-19年秋冬コレクションで初めて発表した、ジョン・ガリアーノよる初のメンズコレクションでは、それより以前に登場したアーティザナルコレクション「シナジー」をテーマに展開していた。なぜなら「アーティザナル」は、メゾン マルジェラにとって、創作の原点であり、そこを頂点として創作のロジックが組み立てられていくからだ。
今季もまたオートクチュールを元に創作がスタートしていく。これまでジョン・ガリアーノが提唱してきた「リラックスド・グラマー」「服を急いで着る」「不適切と適切」「服を逆に着る」の4つと、メゾンの重要なテクニックである「ライニングの匿名性」「メモリー・オブ」「デコルティケ」がコレクションを構築する。さらに、ジョン・ガリアーノが得意とする手法、生地を斜めにして裁断するバイアスカットが加わることで、メゾンの歴史の踏襲とガリアーノの意図する創作が交錯することとなる。
基軸にあるのは、メンズファッションを象徴するクラシカルな表現。恐らくこれはオーセンティックなモチーフを想い起させる「メモリー・オブ」に由来している。そこに、オーガンザやシルク、ジャカード、フェザーといったオートクチュールを象徴するファブリック、そしてクレープサテンやツイードなどのバイアスカットの対象となるファブリックが混在する。
例えば、クラシカルなトレンチコートやテーラードジャケットには、オーガンザで覆われ、そのヘムにはフェザーが軽やかに踊っているし、テーラードジャケットはバイアスのカッティングによって自然で滑らかな動きが加わっている。
また、もうひとつ特徴的だったのが和のテキスタイル。アンティークの着物は1本1本まで解体され、新しい素材へと生まれ変わって登場している。小紋柄をベースに鶴が羽ばたくチェスターコートや青海波と小花が入り混じるオールインワンなど和柄のスタイルは、一見相容れないものを適合させるジョン・ガリアーノの象徴的アイテムだろう。さらに、今回のコレクションの中でも最も典型的なクラシックなチェスターコートのライニング、ポインテッドトゥのブーツなどにまで和のモチーフは採用されている。
マルタン時代のインサイドアウトの手法をガリアーノらしく解釈した「デコルティケ」の手法は、「ライニングの匿名性」を表すとともに表現されている。恐らくもっとも分かりやすかったのは、本来ならジャケットの下にあるはずの肩パットを上に出して、さらにそこからオーガンジーを重ねたルック。オートクチュールを象徴するこの“透過性”のある素材は、メゾンの重要なテクニックとも相性がいい。
そして、レイヤードの概念を覆す「服を急いで着る」「服を逆に着る」手法は、本来ならインナーとして着るはずのコルセットをジャケットの上からかぶせるスタイルや、レザージャケットの上から開襟シャツを重ねるスタイルなどから伺える。