メゾン キツネ(MAISON KITSUNÉ)の2019年春夏メンズコレクションは、「イタリアの海岸への旅」がテーマ。旅の中で出会った、太陽の光に包まれた景色、岩に打ち寄せる波の音、シトラスフルーツの香り、スクーターで駆け抜ける曲がりくねった道……。五感で感じた思い出を投影した今シーズンは、まるで"彼”の旅行記を見ているようだ。
思い出を彩るのは、ほのかにくすんだノスタルジーなカラーとポップなカラーだ。例えば、シチリア島を象徴するレモンがイメージのライトイエロー、海辺の景気を思わせるブルーとベージュ、それと調和するグレーとホワイトといった色合い。太陽の光を浴びてほのかに色あせたようなカラーパレットを通して、朧気な記憶は徐々に鮮明になっていく。
そのベースとなるのは清涼感のある素材で、リラクシングなスーツは、シアサッカーやリネンで軽やかに仕立てた。また、悪天候の日にも備えは万全で、ベージュのロングコートは撥水加工。裏地には、旅の相棒だったスクーターを描いている。そして、ストライプのスラックスやチェック柄のシャツ、マルチカラーのボーダーは、旅においてもエレガントな姿勢を崩さない"彼”にとって、ちょっとした遊び心なのだろう。
象徴的なモチーフも全て旅の中で出会ったものだ。ミラノからはじまり、カプリを経由してファヴィーニャ島へ辿りつく、旅のルートはプルオーパーに刺繍で施している。また、シチリア島のレモンは、刺繍だけでなくパッチで配し、宿泊先の架空のホテルのマークはニットへと記した。
ブランドのアイコンであるフォックスも、イタリアントリコロールカラーに変身。さらに今シーズンは、座って太陽を浴びる姿でシャツやTシャツに落とし込まれた。きっとフォックスも"彼”と同じで、眩しく輝くイタリアの太陽に魅了されたはずだ。
©Kevin Buitrago