ヨウジヤマモト(Yohji Yamamoto)の2019年春夏ウィメンズコレクションが、フランス・パリで2018年9月28日(金)に発表された。
ブランドを象徴する色、黒。この1色での表現の多様さ、そして一つのアイテムから生み出されるバリエーションの豊富さ、デザイナーの力量が試される豊かな表現力が感じられるシーズンだと感じた。
黒のテーラードジャケットは、ラペルやボタンの位置、身体を包むアウターとしての役割など、洋服本来の形・意義を保ちながらもモダナイズされている。同じ黒だが異なる生地を肩の部分だけパッチワークさせてドロップショルダーにしたもの。軽やかな素材を選びつつも、シャツのように肌に沿わずすっとした落ち感を保ったもの。片方のラペルだけがずり落ち、装飾としての新しい任務をみつけたもの。同じ黒のテーラードから生まれているのに、それぞれが強い個性を放ち、全く異なるものに生まれ変わっている。
ジャケットと並んでフォーカスされたブラックドレスは、ローエッジで無骨さを残しながらも女性のセンシュアルな魅力を引き出すアイテムに昇華した。一枚布を巻き付けたかのようなシンプルな作りであるが、布の重なりはすべて計算され、ほんのり肌がみえるようになっている。腰の周りをえぐるようなカッティング、半分だけ見えた肩甲骨、菱形に切り取られた胸下。生地同士が重なり、たゆみ、ひねり…布での表現方法を限界まで楽しみながら、女性の色気を引き出している。
後半に登場したビックサイズのドレスは、序盤とは一変ボディラインを覆い隠したもの。生地を贅沢に使い、こぶのような凹凸を首下から裾にかけてランダムに配した。女性の曲線的なラインをデフォルメしたかのような、デコボコなドレスには弾けるような色彩をのせて。自由奔放に感情のままに描かれたかのような抽象的なモチーフは、宇宙を表現しているようにも、手が下にのびているようにも見え、絵画のように見るものに解釈の自由を与えている。
フィナーレは、Tシャツ&ロングスカートというシンプルな装い。肌見せ、凹凸、曲線美。ショーを通じて展開してきた女性にまつわる捉え方を休み、女性の美しいとされる身体や髪、脚などを包み隠すアプローチのように見えた。ストレートにセンシュアリティを表現しないことで、前半とのギャップが楽しく、また女性らしさをより際立たせているように感じる。