ドリス ヴァン ノッテン(DRIES VAN NOTEN) 2019-20年秋冬メンズコレクションが、2019年1月17日(木)にフランス・パリで発表された。
今季のテーマは「未来への郷愁」。ジャケットやスーツを取り入れたフォーマルなスタイルを主軸に、次世代へのテーラリングについての見解を示す。
コレクションの中では、ドリス ヴァン ノッテンが得意とする装飾は目立たず、落ち着いたカラーパレットが多い印象。
ショーの始まりの合図と共に、ランウェイに現れたのはブラックやブラウン、グレーといったダークカラーのジャケットスタイル。フォーマル服におけるステレオタイプな色合いはそのままに、シルエットや素材に新しい変化をもたらす。リラックスしたムードを持つ、ブランドの従来の領域から一歩離れた、新たなクリエーションが展開される。
肩を大きく落としたドロップショルダーや、高く細いウエスト。未来へと想いを馳せたテーラリングジャケットには、ワイドなプリーツパンツやバギーパンツ、ラップスカートなどが合わされていく。ブランドならではの緻密に計算されたシルエットによって、気品を残しながらも、新しい解釈で伝統のスタイルを再構築している。
フォーマリティの概念を覆す、その素材にも注目したい。セーターと組み合わせたサルエルパンツは、フライフィッシングの防水ウェアのアイディアから生まれたもの。フロントにラバーを、バックスタイルにダンガリーをあしらったユニークな一着となっている。またロングコートには、独特の光沢感を放つポリウレタンを採用。スーツ生地にキルティング加工を施して、フレッシュな印象に仕上げたジャケットもある。
ショーの中盤、コレクションに彩りを与えるのは、様々な色彩を織り交ぜたタイダイ・プリント。パープルやオレンジ、グリーンなどを大胆に重ねたジャケットやシャツ、パンツなどが現れる。複数のカラーが混在しているのに、奇抜な印象に仕上がらないのは、テキスタイル上のモチーフを左右対称に並べた規則性が存在するからだろう。裏地にタイダイ・プリントを施した、リバーシブルのジャケットやレインコートも登場した。
ジャケットやパンツには、ボタニカル模様をあしらった。豪華な植物柄のカーペットから着想を得たというデザインは、その重厚感や高級感溢れる光沢もそのままに表現している。今季のコレクションに共通していることだが、その見た目からは想像つかないほど、軽やかに仕上げられているのがポイント。自由な解釈で仕立てられた未来のフォーマルスタイルは、人々の日常に寄添う着でもあるのだ。