サンローラン(Saint Laurent) 2020年秋冬コレクションが、2020年2月25日(火)、フランス・パリにて発表された。
今季も、エッフェル塔を正面に臨むパヴァルソヴィ広場を会場に選んだサンローラン。ショーの為だけに用意された特別な屋内空間には、観客席から首を伸ばさなければみることができないほどの、ロングランウェイが出現した。そしてそんなランウェイの背景に映し出されたのは、スポットライトの中で浮かびあがる「YSL」ロゴ。ブランドのシンボルを堂々と携えたその会場には、始まりの合図と共にモデル達が次々と姿を現した。
今季はジャケット×パンツをキースタイルに設定。言葉通りだとマニッシュな印象をもたらす着こなしだが、アンソニー ヴァカレロの魔法によって、もとよりフェミニンなアイテム以上に、センシュアルなムードの漂う女性像を描き出していく。
例えばエレガントなピークドラペルに、ツンと肩が上を向いた逆三角形のフォルムが印象的のダブルジャケットは、素肌の上から大胆に羽織ることで、力強さを秘めたセクシーな表情に。組み合わせたスリムなロングボトムスは、艶めかしい光沢感のある素材も相まって、ボディコンシャスなデザインに自然と目が惹きつけられてしまう。また口元には真っ赤なリップを、足元にはピンヒールを合わせて、大人の女性の色気を随所から引き立たてている。
さらに今季は、首元にキュッと結んだスカーフもキーモチーフとなった。前述のジャケット×パンツのスタイリングをはじめ、タイ付きのブラウスを主役にしたルックも複数登場。“隠す”という逆説的なアプローチをとりながらも、大ぶりなスカーフによる装飾によって、コレクション全体にフェミニンな華やかさを投じている。
パレットは、メゾンコードであるブラックのほかに、カラフルな色彩が使用されていることも大きな特徴といえるだろう。コレクションには、かつてムッシュ イヴ・サンローランが生み出したセンセーショナルなカラー“フューシャピンク”をはじめ、鮮やかなパープル、ブルー、レッド、グリーンなどが複数回登場。ビビッドカラー同士のアイテムには、本来主役級の“ブラック”をベルトやブーツのアクセントとして差し込み、バランスのとれたスタイリングを創り上げている。
そんな斬新なカラーアイテムが披露された後、ショーのラストを飾るのはやはり漆黒のドレスだ。胸下でギュッと布を絞った斬新なデザインは、黒一色でありながらも観客たちの目を惹きつけるメゾンならではの一着。ショーの終わりを告げる暗転の合図と共に、暗闇へと変わる会場の奥へと、溶け込むようにして姿を消していった。