アポクリファ(APOCRYPHA)2021年春夏コレクションが発表された。
今季のテーマは“THE SYMBOLIST”。1870年頃に興った文学・芸術活動である象徴派、象徴主義における代表的な作品、シャルル・ボードレールの著書『惡の華』よりインスピレーションを得た世界観の中で、新たなコレクションを制作した。
『惡の華』における文章表現の特徴の一つとなるのが、極めて客観的かつ回りくどいくらいに細かく書かれた人物の心情や情景の描写。その点から着想し、今季はデザイナー自身の経験と心境の変化など内面を具現化する記号として服の存在を捉えたクリエイションを展開する。
播本が“異性に対する観念”を服の上で表現するにあたり積極的に用いたのが、繊細なレース刺繍と大胆なカットオフ。異性との関わりの中で変化する感情における美しさや哀しさ、苦しみ...服たちはまるでデリケートに揺れ動く心のように複雑な表情を呈する。
また、コレクションのアイテムにおいて意識をしたのが、1700年代後半から1800年代初頭のイギリスを中心としたヨーロピアンスタイルとアイテム構成。播本が得意とする端正なシルエットのテーラードアイテムに、18世紀から19世紀に見られるディテールやパターンを落とし込んだ。
田舎の貴族が狩猟用に着用していた伝統的なテイルコートは、オーバーサイズにアレンンジして仕立てた。前後の身頃で丈が異なるテイルコートの象徴的なフォルムは、現代では新鮮さを感じさせる要素に。なお、細部には装飾的なロココ時代の服装を思わせるデザインを反映させており、今季のアポクリファにおけるシンボリックな存在の一着となっている。