ヴィヴィアン・ウエストウッド(Vivienne Westwood) 2021年秋冬コレクションが発表された。
まるで美術館の中に迷い込んだかのように、美しい絵画のグラフィックで彩られている今シーズン。中でもコレクションの鍵を握るメイン作品に選ばれたのは、フランス人のロココ様式を代表する画家フランソワ・ブーシェによる絵画「ダフニスとクロエ」(1974)である。
うっとりするような色彩で牧歌的な情景を描いたこの絵画は、実はこれまでも度々デザインに起用されてきたブランドお馴染みの作品。今回はウィメンズのドレスをはじめ、ユニセックスで楽しめるジャケットやロングレギンスのパンツ、ボリューミーなアウターといった秋冬ウェアに登場。同じく大胆なグラフィックをあしらったロングジャケットのルックは、ロココ時代の三角帽子を連想させる、特徴的なハットを合わせることで、絵画とリンクさせた今季のムードをグッと引き出している。
絵画のグラフィックと並んで、コレクションを彩るのは、タータン、ヘリンボーン、キングオブウェールズチェックなど、ブランド発祥の地・英国にまつわるクラシカルなパターン。端正なテーラリングでクラシカルさを残しながら、大胆に伝統を打ち砕く、ブランドらしいアプローチが目に留まる。例えばタータンチェックのロングジャケットは、ルーズなサイズ感のブラウスに似合う、大きなピークドラペル付き。また素足が覗くミニスカートと2ピースで提案することで、どこか挑発的な空気も孕んでいる。
ふたつの異なるチェック柄で構成したジャケットには、左右異なるストライプ柄のパンツをスタイリング。ひとつひとつのパターンはクラシカルなはずなのに、ドッキングすることで現れるポップな表情、そして余裕のあるゆったりとしたシルエットも相まって、トラッドな空気に現代のメスを差し込んでいるようだ。
また性差を感じさせない、ユニセックスなウェアで溢れる中で、それぞれのアイデンティを存分に楽しむかのようなグラマラスなルックも印象的だ。中でも視線を奪ったのは、胸元に大胆なカッティングを入れたタートルネックのタイトドレス。モデルの魅惑的なボディシルエットを強調するドレスには、網タイツ×シルバーのハイヒールを合わせることで、思わず視線を釘付けにするとびきりセクシーな女性像を描き出している。
コーディネートのアクセントになるアクセサリーも充実。力強いメッセージをのせたクラッチバッグやハート型のハンドバッグ、絵画のグラフィックをいれたトートバッグなどが、それぞれ主役級の存在感を放っている。