エトロ(ETRO)の2021年秋冬ウィメンズコレクションが発表された。
ロシアのバレエダンサーであるルドルフ・ヌレエフと、アメリカのギタリスト、ジミ・ヘンドリックスの世界を着想源とした今季のエトロ。そこに見るのは“自由”な自己表現であった。
シルエットは極めて力強い。フロントに艶やかな刺繍を施したショート丈のジャケットは、スリーブをバルーン状に膨らませてコントラストの効いたフォルムに仕上げている。ペイズリー柄をあしらったプルオーバーニットは、張り出したショルダーの存在感が際立つ。ダブルブレスト仕様のジレは、オーバーなサイズ感でコーディネートに大胆なアクセントをもたらす。ゆったりとしつつ力強いそのシルエットには、確固たる確信に満ちたアーティストの姿勢が映しだされているといえよう。
模様は華麗にして艶やかだ。エレガントな刺繍は、一方でスクエア型のジレやファーをあしらったブルゾンに重厚な模様を織りなし、他方で首回りにたっぷりとフリルをあしらったブラウスでは、その上に繊細な草花を描いている。また、鮮やかなMA-1、ブロック状にパターンを変えたブルゾンやパンツにはクラシカルな植物の図案をあしらい、ガウンやゆったりとしたシルエットのパンツにはペイズリー柄を全面にのせるなど、ラフなアイテムをエレガントに昇華している。
艶やかな光沢を放つ素材にクラシカルな模様をのせたドレスや、歩みに合わせてしなやかに揺らめくフリンジをマントのようにあしらったテーラードジャケットなど、気品に満ちた華やかな装いに対して、フーディやパファジャケットといったストリートテイストのウェアが示すのは叛逆的な自由だろう。奔放な表現の自由において、エレガントな気品とアグレッシヴな姿勢とが、互いにせめぎ合うようにして溶け合っているのだ。