アン ドゥムルメステール(ANN DEMEULEMEESTER)は、2021-22年秋冬コレクションを発表。コレクションルックは、フランス・パリ郊外に19世紀に建てられたフランコンヴィル城で撮影された。
2021-22年秋冬コレクションは、ブランドの設立者であるアン・ドゥムルメステールのテーラリングへの情熱と熟練にインスパイア。アン・ドゥムルメステールの洋服が持つ普遍性にオマージュを捧げ、現代的な方法で再解釈している。含みの無い、純然たる白と黒の世界の中で、タイムレスで本質的なスタイルを追求する。
クリエーションは、ミュージシャンのパティ・スミス(Patti Smith)、アーティストのヨーゼフ・ボイス(Joseph Beuys)、詩人のシャルル・ボードレール(Charles Baudelaire)といった人物のスピリット、そして映画『野性の少年(L’Enfant Sauvage)』から着想を得た。これらの人物、作品の共通点として、規定の概念が存在しなかったところに革新的な可能性を示唆し、秩序立てていった点が挙げられる。
テーラードジャケットやジレ、ブラウス、ドレス、パンツといったベーシックなアイテムの数々は、研ぎ澄まされたミニマルさを持っていながらも存在感があり、余韻を残していく。装飾の無いホワイトのシャツは、ラフに襟のボタンを開け、袖をまくって着た時の偶発的なシワもフォルムを構築する一部として機能している。
大胆に背中の開いたドレスや、歩を進める度に風になびく緩やかなパンツは、身体の動きや姿勢によって都度生まれる生地のドレープや躍動によって、より一層繊細でセンシュアルな雰囲気を漂わせている。一見偶然のようで秩序立っていないかのようにも見える、服地の動きや、その時々で微細に変わっていくフォルムが見せる“彫刻的な美しさ”が印象的だ。
また、タンクトップやノースリーブドレスのルックに用いられたアームカバーは、華奢な紐で腕に固定されることで、シルエットに変化をもたらす。例えばノースリーブのウェアに組み合わせれば身体の輪郭を拡張し、袖のついたブラウスやジャケットに合わせれば、アームカバーに袖が押し上げられ服が変形する。大胆なアクセントとして、また突発的な“変形”の可能性を広げるものとして機能している。
加えて、コレクションに通底しているジェンダーレスな空気感にも注目したい。立体感のある仕立てのテーラードジャケットは、身体のラインを覆うことでジェンダーの境界線を抽象化する。また、ジャケット、パンツ、ブラウスなどは、しなやかな素材の質感や華奢な紐といったディテールから連想されるフェミニニティと、テーラリングに内在するマスキュリニティを絶妙な均衡で組み合わせていくことで、どちらにも属さないニュートラルな雰囲気を描き出している。