2013年9月30日(日)、ジバンシィ バイ リカルド ティッシ(Givenchy by Riccardo Tisci)がパリファッションウィークにて2014年春夏コレクションを発表した。
その晩、次々と車で乗り付けるセレブ達にショー開始前から会場は沸いていた。そして中に入れば、ランウェイの中央に壊れたベンツやBMWが山積みにされ、辺りをもやもやと弱々しく煙が漂う光景が目に入る。観客たちの期待を高めるのに十分な要素がそこにはあった。
そんな空虚感に包まれた空間をつんざく情熱的な太鼓のリズムが、ショー開始の合図。どこかの部族の伝統音楽に思えるそのビート同様、今季のリカルド・ティッシのクリエイションも民族的な雰囲気。ボーダーをベースとしたトライバルな柄に、アフリカの大地の色をした、ボリュームのあるドレーピングのドレス。そして神秘的なマスクがモデルの顔を覆う。アフリカでは、部族によって独自の仮面を伝統的に所有しているというが、スワロフスキー輝くこのデコラティブなマスクは、ジバンシィ族のアイデンテティということだろうか。マスク含め、アクセサリーとして身に着けたスパンコールやビジューがトライバルルックのモダンな味付けとなっている。
前半に登場する複雑な仕立てのジャケットは、日本からのインスピレーションをもとに作り上げた。そのシルエットはまるで胴着か甲冑を連想させる。アフリカと日本の文化がぶつかり、混ざり合うというのが今回のコレクションのテーマだ。クラッシュして重なり合う廃車たちはその様子を表している。
また、特筆すべきはティッシが2013秋冬に見られたような、プリントやキャラクターなどのヤングでストリートなテイストを封印したということだろう。一遍変わって今季はエレガントに、シルエットやディテールで魅せる服で勝負している。前述したドレーピングのドレスをその筆頭に、細やかなプリーツや同色でのさりげない素材の切り替えなどに見て取れるだろう。ドレスに施されたカッティングより覗く胸元、ワンショルダーで魅せる華奢な肩、そして深いスリットから伸びる足。大人の女性にふさわしく、適度な肌の露出も目に付いた。特に、ドレスのプリーツの付け根には逆三角形を描くように穴が開いていて、隙間からお腹が覗く仕組みは、新鮮さを与えるとともに、さりげなくも効果的な女性らしさを演出した。