映画『マトリックス』シリーズの最新作『マトリックス レザレクションズ』が、2021年12月17日(金)より公開される。
1999年に公開され、斬新な映像体験で空前の人気を博した映画『マトリックス』。この世界が作られた「仮想世界=マトリックス」であったという衝撃的な設定をはじめ、従来のアクション映画の概念を刷新する超絶アクション、独創的な映像と撮影手法などにより世界中の人びとに衝撃を与え、2003年には2作目『マトリックス リローデッド』、3作目『マトリックス レボリューションズ』も公開されている。
そして今回、シリーズ4作目の映画『マトリックス レザレクションズ』が公開。最新作となる本作では、前作から続いてネオ役のキアヌ・リーブス、トリニティー役のキャリー=アン・モスらが続投する。キャリー=アン・モスにインタビューを行い、トリニティーというキャラクターへの思いなどについて話を伺った。
──前作に続いてのトリニティー役でした。本作は、現実空間と仮想空間を軸に、前作の記憶を引き継ぐなど、舞台の複雑な広がりを見せています。物語の面白さはどこにあるとお考えですか。
さまざまな要素が多層的に物語を構成している点です。本作では、過去の演技を編集で入れていくことにより、前作の記憶を引き継いでいます。トリニティーという人物自身は前作の記憶をあまり持っていない一方、これまでにマトリックスをご覧になっている方は、そうした部分を通して前作の記憶が喚起されることになります。
本作では、ストーリーテリングの妙と相まって、そうした構成がひじょうに力強い効果をもたらしています。わたし自身、このシリーズに携わってきた身として、とても感動しました。
──トリニティーという人物を演じる際、そのように多層的な物語を意識されましたか。
確かに物語の多層性は、ラナ・ウォシャウスキー監督が提供している面白さではあるのですが、実は演技の際、わたしはその部分をあまり考えませんでした。むしろ、わたしはラブストーリーを念頭に置いていました。
トリニティーを演じるとき、わたしは彼女の心の中に入り込んでいきます。そこで考えることとは、彼女の人間性、力強さ、あるいは脆さなのです。わたし自身、トリニティーという人物を愛していますし、そしてまた、多くの方々もトリニティーのことが大好きです。ですから、あたかも宝石を扱うかのように、大きな責任を感じて丁寧に演じました。
──改めてトリニティーを演じて、その人物像に発見はありましたでしょうか。
トリニティーとネオは、いわばラナ・ウォシャウスキー監督の心なのであり、彼女の心を表現する具体的な伝達手段としてトリニティーがいるのだと思います。監督はトリニティーというキャラクターを愛しているし、わたしも監督を尊敬しているので、演じることで彼女の一部になれるということはひじょうに光栄でした。
──さて、本作では、『マトリックス』シリーズならではのアクションシーンも見どころです。撮影で大変だと感じたシーンはありますか。
いちばん大変だったのは、ビルから飛び降りるシーンでした。撮影の前には、たくさんトレーニングをして臨んでいます。それはつまり、自分はできるのだと精神的に鍛えることです。具体的には、瞑想をしたり、視覚化したりすることで気持ちを準備し、できることに対して自分をオープンにするようにしました。
──高いところは苦手なのでしょうか?
高所恐怖症というわけではありませんが、高い場所に行くと緊張を感じることはあります。けれどもトレーニングのおかげで、撮影当日は神経質にならず、むしろ楽しみに感じていましたし、撮影後も無事にできたという達成感でいっぱいでした。しかしやはり、高い場所に対する緊張感を克服したわけではなく、その撮影日だけ大丈夫だったようです。
──ところで、本作は前作から約20年を経ての続編となりました。ハリウッドという環境においても、時の経過を感じることは多いでしょうか。
わたしたちの文化は、男性が年をとることについては寛容ではある一方、女性に対してはそれを受け入れようとしません。ハリウッドにもさまざまな不均衡がありますが、それは自分だけで解決できることではありません。ですからわたしは、あくまで自分自身により正直であるようにしています。
──男性がヒーローとして活躍することが多いなか、前作でヒロイン・トリニティーの姿に励まされた方もいらっしゃるのではないかと思います。
そのように、自分がこれまで歩んできた軌跡をそのまま受け入れるという意味でも、自分に正直でありたいです。
女であること、そして年齢を重ねることについて、自分でも完全に理解しているわけではありません。けれども、男であろうと女であろうと、そして女優であろうとやはり年をとるということ、そして若さを失うということに寛容ではないこの文化においても、わたしは自分自身を受け入れたいと思っています。