ラマルク(LAMARCK) 2014年春夏コレクションが渋谷ヒカリエで発表された。今季のテーマは「UBIQUITOUS EXPRESSION」で、直訳すると「遍在する表現」。デザイナーの森下慎介は「遍在性、普遍性といったものをラマルクというブランドが表現したらどうなるのか実験的に挑戦してみました」と語る。
「UBIQUITOUS」はネット用語にも使われている言葉。現代技術に散りばめられた遍在的な価値を追求する中で、フェミニティへの憧憬を表現し、モダンでクリーンなスタイルの深化を進めていく。
今回特筆すべきは、やはりニットを多用したことだろう。春夏にはあまり見かけないケーブル網のニットの素材には、極細のリネンを混ぜて軽さと涼しさを表現。後半に登場したスカイブルーのニットのセットアップは、絣糸(かすりいと)とポリエステルの光沢糸を混ぜた糸で様々な柄が織り込まれ、ラメ糸を織り込んだようなリュクスな光をもつ。またニットカーディガンを前後ろ逆に着させるなど、着こなしの妙で魅せることで観客の目を奪い、ディテールへと視線を誘うことに成功している。
モードなセットアップスタイルは、左右アシンメトリーな丈のトラウザーでスタイリングに新しさを。ジャケットのラペルを排すことで、削ぎ落とし生まれるミニマルな美しさを表現。ブランドらしいモードなアプローチは、今季のコレクションにも息づいている。前に飛び出たユニークなヘアスタイルは、バックのディテールを見せるためのもので、後ろからのアングルだと、リボンに見えるのだそう。
最後を飾るのは、横糸にリネン縦糸にフィルムを用いた混紡の生地を用いた、シルバーの輝きを放つ気品に満ちた洋服。手で裂き、その素材を表出させたその裾や袖からはフリンジ状に表現された細い糸がゆらゆらと揺れる。前進的進化をキーワードにクリエイションを展開するラマルクは、ハイテクな意味での「UBIQUITOUS」を、素材感や生地の使い方の斬新さで体現して魅せた。
絶えず進化する時代やあらゆる事象を捉え、そこにデザインを重ねあわせて前進していくラマルク。「シンプルなものが一番難しい。削ぎ落としデザインを抜くこと、それも一つのデザインだと思っている」と語る森下。ベーシックなをものを土台に据えながら、そこにデザインを一個足すこと、または一個引くことで新しさを生むことは、繊細さが問われる細やかな仕事。ダイナミックに変えれば「違い」はわかりやすく、人々の注目を集めるのは容易いだろう。ラマルクのデザインは、この繊細でミニマルな技で生まれる確かな違いも同様に人々を惹きつける引力をもつことを教えてくれる。