セヴシグ(SEVESKIG)の2023年春夏コレクションが発表された。テーマは「distortion」。
インスピレーションの源になったのは、誰もが被害者にも、加害者にもなりうるネット社会。承認欲求を得ようとする人、誹謗中傷に苦しむ人、SNS上でのリンチに爽快感を感じる人...など、ネット社会に渦巻く“歪んだ”感情から着想を得た。現代の闇をテーマに掲げることで、SNS上の行き過ぎた行動に警鐘を鳴らす。
セヴシグが着目したのは、「ネットリンチする人たちは、サイコパスでも殺人犯でもなく、“ごくごく普通の人たち”」だということ。SNS上でストレスを発散する“普通の人たちを、ブランドなりに解釈し、その人物像をコレクション全体に投影している。Mのロゴを配したスエットトップスは、外回りと称してマクドナルドで暇を潰すサラリーマンを、くたっとしたライダースジャケットや袖を捲り上げたTシャツは、伸び悩んでいるアーティストを連想させる。
ネットの匿名性を介して露わになる、人間のどろどろとした欲望は、歪みのあるシルエットや、破れたディテールで表現。Tシャツやデニムパンツといったカジュアルウェアだけでなく、テーラードのセットアップにも、だぼっとルーズなシルエットや、ユーズド感のあるファブリックを採用している。透明糸を用いて編みたてた、クラッシュ風のニットウェアもキーアイテムだ。
セヴシグのメッセージを代弁する象徴的なピースとして登場するのが、アニメ映画『パーフェクト・ブルー』とのコラボレーショントップス。愛するがゆえに生まれる歪んだ感情を描いた、今敏監督の名作だ。映画の公開は1998年。24年以上たった今でも、変わらず同じことを繰り返す世の中を、ポップなキャラクタープリントをもってして、アイロニカルに表現した。