「What is truth?」「What is truth?」「What is truth?」……。アウトローなカントリーの帝王、ジョニー・キャッシュの歌のタイトルが会場に木霊する演出で、MSGM(エム エス ジー エム)の2014-15年秋冬メンズコレクションは幕を開けた。今イタリアで最も注目されているブランドのデザイナー、マッシモ・ジョルジェッティが思う“真実”とは何なのだろうか?文庫本のページをめくるように、1ルックずつ子細に観察してみるとしよう。
ファーストルックは、ベージュ×ブラックのギンガムチェックのシャツと同柄のクロップドパンツに、袖とヨークがゴールドになったショート丈のダッフルコートを羽織ったスタイル。上下の柄を揃えることでオールインワンのように見せている。レディースを1体挟んだ最初の6ルックは、ベージュのアウター(MA-1やバーシティージャケットなど)が主人公のイギリスのユースカルチャー的な雰囲気だ。
続いては大柄の行進。シャツの上に重ねた半袖ニット、ラグランスリーブのステンカラーコートは、トレンドのビッグチェックで表現している。レディースの“ビッグリップ”のコートの後は、生地の切り替えで迷彩を表現したドロップショルダーのダブルブレストのコート、同じ生地のプルオーバーのスウェットシャツを主役としたルック。これらのアウターはビッグサイズだが、他のアイテムをタイトにまとめることで上手くバランスを取っている。
中盤に入ると「TRUTH」のロゴ入りセーターや、悲劇の女性詩人、シルヴィア・プラスの愛の詩が落書き風にプリントされたスウェットシャツが登場。それらがトラッドなルックの山椒的な役割を果たしていて、全体とピリリと引き締めつつストリートの匂いを加えている。ラストは、稲妻が縦横無尽に走ったような大理石プリントのアイテムを提案。80’sとトラッド、スポーツをミックスした雰囲気で、今の東京のファッションとも相性が良さそうだ。
カラーパレットはベージュ、グレー、ネイビー、ホワイト、ブラックを基調に、ゴールド、シルバー、オレンジを挿し色として使用。素材は凹凸のある表面感のあるウール、サラッとしたスーツ地的なウールを中心に、コットンポプリン、スポーツジャージーなどを織り交ぜている。ダークな色調が多かった今シーズンのミラノの中では、カラフルで若々しい印象で、とくに新しさはないけれど日本人的な編集力に長けている印象を受けた。
さて、「What is truth?」の答え合わせをしてみよう。マッシモは、アメリカのインディー・ロックバンド、ヴァンパイア・ウィークエンドの歌の中の「Don’t Lie」「I am what I am」という言葉と、シルヴィア・プラスの愛の詩を引用して答えを導いている。真実(生きるうえで大切なこと)は「嘘をつかず自分らしくいることと、人を愛し愛されること」。今回のコレクションには、そんなストレートなメッセージが込められているのだ。
Text by Kaijiro Masuda(FASHION JOURNALIST)