天下統一を掲げる織田信長は、毛利軍、武田軍、上杉軍、京都の寺社勢力と激しい戦いを繰り広げていたが、その最中、信長の家臣・荒木村重が反乱を起こし、姿を消す。信長は明智光秀、羽柴秀吉ら家臣を一堂に集め、自身の跡目相続を餌に村重の捜索を命じる。
「働き次第で俺の跡目を指名する。いいか、荒木一族全員の首を斬ってしまえ!ただし、村重だけは殺すな。俺の前に必ず連れてこい!」
秀吉は弟の羽柴秀長、軍司・黒田官兵衛とともに策を練り、千利休の配下で元忍の芸人・曽呂利新左衛門に村重の探索を指示する。秀吉は逃亡した村重を利用し、主君の信長と光秀を陥れ、密かに天下を獲ろうと企んでいたのだ。新左衛門によって捕らえられた村重は光秀に引き渡されるが、光秀は村重を殺すことができず、城に匿う。同じころ、成り上がり者の秀吉に憧れる百姓の難波茂助は村を飛び出し、戦場へ。そこで出会った新左衛門は、出世して大名を目指そうとする茂助に天下一の芸人になることが夢の自分を重ね、ふたりは行動をともにすることになる。村重の行方が分からず苛立つ信長は、村重の反乱の黒幕が徳川家康だと考え、光秀に家康の暗殺を命じる。だが、秀吉は家康の暗殺を阻止することで信長と光秀を対立させようと目論み、その命を受けた新左衛門と茂助がからくも家康の暗殺を阻止することに成功する。家康を排除したい信長は、京都・本能寺に茶会と称して家康をおびきよせる計画を光秀に漏らす。信長を討つ千載一遇の好機を得た光秀は、村重に問う。
「これは……天命だと思うか?」
信長への愛憎入り乱れた感情を抱きながら、ついに信長の“首”を獲る決意を固めた光秀。一方、秀吉は家康を巻き込みながら天下取りのために奔走する。武将たちの野望、芸人と百姓の野望、それぞれの野望が“本能寺”に向かって動き出す。果たして、この“首”の価値は如何に?
映画『首』は、映画監督・北野武が構想に30年を費やした戦国スペクタクル映画。“本能寺の変”が、戦国武将や忍、芸人や百姓といった多彩な人物の野望と裏切り、運命とともに描かれる。北野武自らが“本能寺の変”を策略する羽柴秀吉を演じるほか、西島秀俊、加瀬亮、中村獅童ら豪華キャストが集結。