時は明治37年、福井県足羽郡麻生津村(あすわぐんあそうづむら、現・福井市麻生津)の庄屋の長男・増永五左衛門と妻むめは、育児と家事で忙しい日々を送っていた。ある日、五左衛門の弟の幸八が大阪から帰郷し、メガネ作りに取り組まないかと?提案する。村をあげて産業とするのだ。今はメガネは一般的ではないが、活字文化が普及すると必ずや必需品になるという。初めは反対していたが、視力の弱い子供がメガネをかけて大喜びする姿を見て、挑戦を決めた五左衛門は、村の人々を集めて工場を開く。しかし苦労の末に仕上げたメガネが「売り物にならない」と卸問屋に突き返され、資金難から銀行の融資を受けるも厳しく返済を迫られ、兄弟は幾度となく挫折する。そんな二人を信じ、支え続けたのが、決して夢を諦めない強い心を持つむめだった。彼女に励まされた兄弟と職人たちは、“最後の賭け"に打って出る。
実は日本産メガネの95%は福井県で生産されている。特に有名なのは鯖江市でメガネの聖地と言われている。福井は豪雪地帯のため冬は農作業ができず収入の道がなくなる村を助けようと出来た産業がメガネなのだ。
藤岡陽子原作の「おしょりん」は、明治時代の福井を舞台に、メガネ工場をゼロから立ち上げた増永五左衛門と幸八の兄弟と、二人を信じて支え、見守り続けた妻・むめを中心に描いていく。それは、挑戦、情熱、そして家族の愛の物語。史実をもとに、福井がメガネ産業で発展した成り立ち、“ものづくり”の魅力と、技術、魂を吹き込む職人と彼らを支える家族を感動的に描きあげる。