ベッドフォード(BED j.w. FORD)の2024年春夏コレクションが、2023年6月25日(日)、フランス・パリにて発表された。
ベッドフォードが、デザイナーの山岸自身「ずっとやりたかった」と語るパリでショーを開催。2015年にパリで初めてファッションショーを観て──それはラフ シモンズであったという──、「僕はいつかこの国でランウェイをしたいな、するんだろうな」と感じて以来、30代の目標としてきたと話す。
そのコレクションのテーマ「last morning」とは、日々たしかに繰り返されるものの、しかし同じ朝は二度とこない、ただ一度きりの朝の謂いである。「見たことがある気がするが、実のところ、見たことがないものに違いない」──一見繰り返されるように思われる朝は、だから、つねにそれ自体新しい始まりであるという。
それゆえ、今季のコレクションは、2023年秋冬の雰囲気をなぞりつつ、しかし軽快に歩みだす。それは、ロングコートが軽やかに揺らめき、ロングシャツや丈を長めに設定したジャケットが縦のラインを際立て、ツイードジャケットやトップスに織り込んだラメ糸がきらめき、あるいは星形モチーフがディテールを飾るなど、コレクションの随所に見てとることができる。
山岸はここで、男性が放ちうる色気を意識しているという。洗練された縦のラインと流麗なシルエット、シアーな素材感、朝の起き抜けにさらりと身にまとうかのようなハーフパンツなどは、その例だろう。また、先シーズンも登場した有機的な曲線を描くラペルは、今季もテーラードジャケットに採用。その曲線は、ヴァイオリンの形状に着想しているという。ふとここで、ヴァイオリンが女性の身体の流れるようなシルエットを彷彿とさせることを思い起こしてもいいのかもしれない。
「重さ」から離れて、素材感はきわめて軽やかだ。たとえば、ラメ糸のきらめくジャケットやベストに用いたファンシーツイードは、その見た目以上に軽快。アノラックジャケットのナイロンも、カモフラージュ柄をのせたシアー素材も、爽やかに身体を取りまく軽やかなものとなっている。
朝に目にするだろう、空の、空気の繊細な機微を表現するように、カラーパレットはニュアンスに富んでいる。ジャケットに用いたスモーキーピンク、カモフラージュ柄ファブリックの霞を帯びたようなベージュ、あるいは深みのあるブラウンなどが用いられた。