フミエ タナカ(FUMIE TANAKA)の2024年春夏コレクションが、2023年10月11日(水)に東京・恵比寿のザ・ガーデンホールにて発表された。テーマは“islanders”。
真っ暗なコンサートホールに響き渡るヒールの足音。期待と興奮に満ちた暗闇を割るように登場したのもまた、どこまでも深い闇の色を纏った衣服であった。
コレクション前半を構成するのは、執拗なまでのブラックカラー。クラシカルなレースディテールにフレアスカートを組み合わせたドレスに始まり、光沢のあるマテリアルをハート型のように仕立てたキャミソール、オリエンタルなムードを讃えたナイトドレスまで、“黒”という制約の中で多彩な表情が次々と披露される。
そこから一転、無垢な光を彷彿とさせるホワイトレースのブラウスやノンシャランなテーラードスタイルを経由し、鮮烈な“赤”が生み落とされる。ビッグシルエットをベースに何枚ものフラップを配したセットアップや、縫い目を感じさせず洒脱な余裕をも漂わせるドレス、生き生きとした花が咲くパンツは、命が生まれ出る強い力を打ち出しているかのようだ。
後半を彩ったのは、“抜けるような青い空”や“透き通るような青い海”とはこんな色を指すのかと思われるような、どこまでも軽やかで透明感のある“水色”のルック。民族衣装を彷彿とさせるタッセル付きのブラウスや、メンズライクなシングルブレストジャケットと透け感のあるフリルスカートのスタイリング等からは、青い地球に息づくあらゆる人々を繋ぐようなメッセージ性が感じられた。
アクセサリーは、動く度にイエローゴールドが輝きを放つタッセル状のイヤージュエリーや、チョーカー風の地金とタッセルモチーフを組み合わせたネックレスなどが並ぶ。
コレクションの最後は、「情熱」「悲しみジョニー」などの曲で知られる歌手・UAがミニライブを披露。中でも冒頭に歌われた「水色」の歌詞ーー「季節は限りなく回り続けてるけど、わたしのこの心に光る水色は、いついつまでも変わらない空と海の色。思い出よ、ありがとう」ーーは、コレクションに通底する想いを代弁するかのようであり、訪れた人々の旨に郷愁にも似た余韻を残した。