ラッド ミュージシャン(LAD MUSICIAN)の、2024年春夏コレクションを紹介。
2024年春夏シーズンは、作曲家モートン・フェルドマンが作り出した、抽象的でどんどん深みに入っていくような音楽世界と、劇作家サミュエル・ベケットの不条理な小説『Worstward Ho / いざ最悪の方へ』からインスピレーションを得ている。言葉による説明や、必然的な論理による説明が不可能な要素で構成された世界観を投影し、変則性や幽玄の美をコレクションに落とし込んでいる。
目に留まるのは、グレイッシュな色使い。テーラードのセットアップやボンバージャケット、ブルゾンなどは、ニュートラルなライトグレーや、グレーがかったカーキをまとい、静謐な佇まいを演出する。さらりとした質感のステンカラーコートは、自然に刻まれるシワ感やドレープが表情を与え、メッシュニットカーディガンはその透け感によって装いに軽やかさをもたらしている。
シャツやブルゾン、トラックジャケットにあしらわれた影のあるパンジーの花は、フェルドマンの紡ぐ虚無な音をイメージしている。また、アノラックパーカやブルゾン、パンツに広がる色鮮やかなペイントモチーフは、19世紀の絵画からインスパイア。抽象的に広がる色彩が、広大な宇宙空間を連想させる。
既存の配置からあえてずらしたレイアウトのデザインも象徴的だ。緩やかなデニムブルゾンは、フロントの中心をずらしてネックポイントを斜めに仕上げることで独特のバランス感に仕上げた。カバーオールやシャツのカフスは、従来の位置ではなく袖の前方にくるように仕立てることで、デザインのアクセントとして機能している。
流動的で柔らかな雰囲気も、今シーズンならでは。明るいミントグリーンの布地やデニム地など、様々な素材で登場しているラップスカートパンツは、ふんだんに生地を使いエレガントなシルエットに。また、ミニマルなカットソーワンピースや、パンツにレイヤードして着こなしをアレンジできる巻きスカート型のエプロンスカート、しっとりとしたカラーブロックのアーガイルニットなど、装いに柔らかさをもたらすアイテムが散見された。
なお、今季は日本唯一の馬具メーカーであるソメスサドル(SOMES SADDLE)とコラボレーション。足をかける鐙(アブミ)を吊るす鎧革をモチーフにしたレザーベルトを展開する。また、42ND ロイヤル ハイランド(42ND ROYAL HIGHLAND)とタッグを組んだ、軽く快適な履き心地のローファーも登場する。