私の場合は、長いプロセスがあります。趣味で楽しくて映画を長い間作っていましたが、一度も仕事になるとは思っていませんでした。大学のとき初めて映画を作ったのですが、それから年1回の短編映画を作るために貯金し始めました。『ショート・ターム』もそのひとつで、8作目にあたります。これが初めてサンダンス映画祭に認められました。
よく分かりませんが、ただ楽しかったからです。稼ぎがなくても、映画を作っていたのだと思います。
部屋で一人ずっと物語を書き続け、それが終わると大勢の人を集め、社交的な雰囲気の中で撮影に取り掛かります。そして撮影を終えると、今度は私ともう一人のスタッフで編集ルームに入り、作品を仕上げ、最後はまた皆で集まり映画を観る。私は映画制作における、このプロセスがとても好きです。
その問題はいつもですね。自分のどの映画においてもいえるのですが、まず映画のために資金を集めることが大きな挑戦でした。少ない予算で、たくさんの子役たちをキャンスティングすることもそうです。この映画に登場する子供たちに何が起きているのかを理解でき、そしてリアルに演じることのできる若い役者を探すのは大変なことでした。
ひとつは、感情移入できるかどうか。ティーンエイジャーにとって、自分自身から抜け出し、別の人の目で世界を観ることは凄いことです。あとは実際に、真に迫った演技ができるかですね。
これまで女性的な観点で物語を描いたことはないので、これが初めて。自分にとって大きなチャレンジでした。
女性的な観点を描くことで、私は何かシンプルかつ明確なこと気付きました。物語を書いているとき、私自身がグレイス(ヒロイン)になっていて、自分とは無関係な視点では書いていないということです。私の想いは、これを観た女性たちとそこまで変わらないと思います。
映画を観た人がそれぞれ異なる気持ちになるので、あまり多くを語りたくはありません。
しかしこの映画には、両親や子供という存在だけではく“人に影響するのは人”という大きなアイディアがあります。誰かに何かをしたり言ったりという、すべての相互作用が、相手に強く影響を与えるということ。
例えば映画の中で、親は子供に本当に恐ろしいことをしています。子供たちはその経験をずっと心に抱え、その後の人生を歩まなければなりません。
でも一方でこういった例もあります。とても些細だけど、心の温まる何かをしてあげるところ。それもまた相手にとってはずっと忘れられないものになるのです。主人公のグレイスが、サミーという男の子にカップケーキをあげるシーン。とても小さなことですが、きっと彼はその出来事を忘れないと思います。
つまり私たちは皆、誰かと交わっていて、ポジティブにもネガティブにも何か影響を与えているのです。
もし子供が虐待に合っていたとしたら、まず誰かに伝えなければなりません。事実が確かなのか明らかにし、子供たちをその状況から離すことです。でも映画の子供たちは、鬱病を患っているなど、虐待にあっているだけではありません。
私は子供でもあなたの友達や母親でも、切実な同情心を持って、そばにいたいと思います。グレイスの恋人であるメイソンが「I'm gonna walk through this shit with you.(一緒に乗り越えられるはず)」と言ったように。「きっと良くなるよ」なんて言ったり、アドバイスをしたりする必要はありません。何が起きても、その人のそばにいることが大切だと思うのです。
穏やかな笑顔で終始、インタビューに応じてくれたデスティン・クレットン監督。本作では非常に多く賞を受賞し、世界中で絶賛されているのだが、監督が語る言葉の一つひとつからは、純粋に映画をつくることが大好きだということ、そして保護施設で経験がいかに人生を生きる上で大切なことだったのかということが、伝わってくる。
次回作は、すでにジェニファー・ローレンスが主演、プロデューサーを務める、『The Glass Castle(ガラスの城の子どもたち/原作:ジャネット・ウォールズ』を監督することが報じられている。今後ますます彼の活躍に、目が離せなくなるだろう。
【作品情報】
『ショート・ターム』
日本公開日:2014年11月15日(土)
監督:デスティン・クレットン
出演:ブリー・ラーソン、ジョン・ギャラガーJr、ラミ・マレック、フランツ・ターナーほか
2014年11月15日(土)から新宿シネマカリテ、ヒューマントラストシネマ渋谷ほか、全国で絶賛上映中
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