ポール・スミス(Paul Smith)の2025年秋冬メンズコレクションが発表された。
幼少期から写真に親しみ、自らカメラを手にしてきたデザイナー、ポール・スミスにとって、写真とはファッションデザインの着想源であり続けてきた。今季のコレクションでは、ソール・ライターをはじめ、20世紀を代表する写真家たちに光をあてつつ、トラディショナルな装いにさりげないアレンジを加えたスタイルを展開している。
コレクションの軸のひとつであるテーラリングは、端正なシングルブレストジャケットなど、構築的な仕立てを基調にはしながらも、素材やディテールで意外性をプラス。グレンチェックなど、クラシカルなファブリックばかりでなく、コーデュロイ、ウォッシュを施したヘリンボーンなどを採用することでカジュアルさを添えるほか、アップリケ遊び心を加えた。
さて、今季の着想源となった写真家のひとり、ソール・ライターは、1950〜60年代のニューヨークではファッション・フォトグラファーとして注目を集め、のちに「カラー写真のパイオニア」として活躍。当時、カラー写真は商業的な用途で用いられることが多かったなか、ライターはそこに表現の価値を認めたのであった。コレクションでは、その色彩感覚を反映するように、深みあるグリーン、オレンジ、ブルーといった彩りを、ブラウンやベージュを基調とする落ち着きのなかに取り込んでいる。
今季のコレクションを触発した写真家をもうひとり挙げるのならば、それはポール自身の父であり、アマチュアのカメラマンでもあったハロルド・B・スミスだ。その作品は、細部を捉える眼差しと、ユーモアあふれる遊び心をあわせ持っており、それはポールにも影響を与えることとなった。その繊細かつユーモラスな眼差しは、今季、ジャケットやシャツ、ネクタイなどに見られる、彩り豊かでありつつ遊び心に富んだ花柄「フィールド フラワー(Field Flower)」のプリントに現れている。
さらに今季は、トラディショナルなイギリスのファッションのいち側面を体現する、バブアー(Barbour)とのコラボレーションも。ブランドを象徴するワックスドコットンのコートに、深みあるトーンとコントラストカラーのディテールを合わせるなど、ポール・スミスならではのひねりを効かせた。