実際に吹き替えする際に意識したことはありますか?
柄本:この作品は吹き替えがどうこうで揺らぐような作品ではないという気持ちがどこかにあって、いいお芝居はもうここ(画面)でやってくれているから、自分はとにかく楽しんでやろうと振り切ってやっていました。かつ、僕が演じたチャッカリという役が、いたずらっ子で楽しい雰囲気もあるので。
綾瀬:チャッカリの声、本当に柄本さんにぴったり。ちょっと意地悪なんだけど、本当は可愛いみたいな性格が声に出ていました。ふざけているけどセクシーな感じ?
柄本:そう?(笑) 僕の声撮りが1番最初だったようで、もう本当に不安な中やってたんですけど…。
綾瀬:チャッカリって感情も顔の表情もすごく豊かだから、すごく遊べる役じゃないですか。それがうまく、強弱だったり声の高低差で伝わってきた。だからずっと観てても飽きませんでした。
柄本:逆にロズの場合は、ちょっと遊びを加えたいと思っても、ロボットだし感情的な面で抑制されているから余計難しかったんじゃないですか?
綾瀬:はい。チャッカリいいなって何度も思いました。私もこういう役やりたいって。(笑)
柄本:気持ちを抑えるのに、きっと大変だっただろうなと思いました。
綾瀬:最初は本当にロボットっぽく、機械的な感じで演じていたんですが、途中から感情が芽生えてくるから、そこのバランスがやっぱり難しくて。最初は敬語を使っていたのに、だんだん使わなくなったりと。急に別人のようになるから、その切り替えが馴染むまでは変な感じがしました。
最後のほうになると、ロズに母親のような愛情が芽生えて、どんどん人間らしくなっていきますよね。綾瀬さんも演技される上で、どこか解放されるような気持ちはありました?
綾瀬:もちろんありました。ロボットのロズが自由に発言するようになってから、物語的にもどんどん面白くなっていきますし。感情を持ってから、ロズというキャラクターの人となりがやっと見えてきて、演じていても気持ちが良かったです。
柄本:ロボットの平坦なトーンから、ちょっとずつ奥行きが出てくる感じ、すごい伝わってきたよ。1番最初に綾瀬さんの声を聞いた時、本当にロズの声にぴったりだと思ったもん。多分監督とも長いことやり取りしてたんじゃないかとは思うけど、声がすごく深くて素敵だった。
綾瀬さんは初の長期休暇を取られたり、柄本さんはお子さんが生まれたりと、公私ともに変化のある30代だったと思います。振り返ってみて、どんな年代となりましたか。
綾瀬:過ぎてみればあっという間だなと思います。私はもともと未来の計画を立てたりしないタイプで、いつもぼやっとしているので、思い通りの30代かと聞かれればよく分からないのですが…。頭で思い描くのではなくて、きっと心で思っている通りになっているのだろうなと思います。
柄本:僕は1番大きく変化したのは子どものことになるかもしれません。でもありがたいことに、いい刺激を色んな所からいただきながら、俳優活動の面についても楽しく過ごさせていただいた30代だったかなという感じがします。
年齢を重ねて、これまでの演技への向き合い方で変わった部分ってありますか。
綾瀬:基本的にあまりないです。演じる役が違うから、毎回新鮮ですし。
ただ、最近、現場に入る前の準備期間にもっと時間をかけたいなと思うようにはなりました。作品の準備段階から参加したり、脚本について打ち合わせしたり、そうやって一緒に作り上げていく時間を増やすことで、余裕をもって挑めるのかなと。
柄本:僕も、演技への向き合い方は基本的にずっと変わらない。もちろん作品によって、その時のマインドだったりノリだったり、自分で流行っているものは違うけども、自分の芯みたいなものは変わっていない気がします。
一貫して持ち続けている“芯”とはなんでしょう?
柄本:とにかく「よくわからないところに身を置く」ということです。“わからない”とか“正解がない”というワードは昔から大切にしていますし、自分の知らない世界に飛び込んでみるという姿勢はこれからも継続したいです。
柄本さん、最初の方で「アニメが大好き」とおっしゃっていました。どのようなアニメを見るのですか?
柄本:そうなんです。僕はアニメが大好きで、色んな作品を観てます。
綾瀬:アニメも観るとは意外でした。
柄本:めっちゃ観ますよ。クレヨンしんちゃんの映画『謎メキ!花の天カス学園』とか最高。「【推しの子】」とか「ダンダダン」とか、結構流行りのものも観ています。あと最近1番ハマったのが「チ。」。知ってます?
綾瀬:チ…?ですか?
柄本:「チ。ー地球の運動についてー」っていうアニメなんですよ。昔、世界は丸くなく平らだと言われていたじゃないですか?そんな状況で命をかけて地動説を証明する、みたいなお話ですが、それがめちゃくちゃ面白いんです。
綾瀬:面白そう!私も観てみます!
お2人ともファッション好きだそうですが、最近の“ベストバイ”を教えていただけますか?
綾瀬:2024年は、黒までいかない、グレーっぽい色味のハイク(HYKE)のデニムを買って、毎日のように履いてました。ちょっとダボっとしていて、着心地もよくてお気に入り。私は寒がりなので、いつもデニムを履くときは下にレギンスを仕込むんですが、ハイクのデニムはすり合わせも悪くないし、シワにもならないし、とってもいいんです。
柄本:僕はなんでしょう…ベストバイ。ファッションは大好きなんですが、なんせ最近買っているものが少ないんですよね。(笑)
最近、買ったものでなければ、僕は財布と小銭入れとキーケースとカードケースを全部分けていて、その4点セットがすごく気に入ってます。全部違うブランドなんですけど、使うたび見るたびにワクワクする柄なんですよ。財布とかキーケースとかって毎日使うものだから、やっぱりテンションが上がるものを選んで正解だったなと思います。
【作品詳細】
映画『野生の島のロズ』
公開日:2025年2月7日(金)
監督・脚本:クリス・サンダース
声の出演:ルピタ・ニョンゴ、ペドロ・パスカル、キャサリン・オハラ、ビル・ナイ、キット・コナー、ステファニー・シュウ、マット・ベリー、ヴィング・レイムス、マーク・ハミル
〈日本語吹替キャスト〉
声の出演:綾瀬はるか、柄本佑、鈴木福、いとうまい子、千葉繁、種﨑敦美、山本高広、滝知史、田中美央、濱﨑司
配給:東宝東和、ギャガ
原題:THE WILD ROBOT
©2024 DREAMWORKS ANIMATION LLC.