映画『ジュラシック・ワールド/復活の大地』にて、監督を務めたギャレス・エドワーズ、脚本を手掛けたデヴィッド・コープにインタビュー。
1993年、巨匠スティーヴン・スピルバーグによって誕生した映画『ジュラシック・パーク』。現代によみがえった恐竜と人間たちをリアルな映像で描き出し、映画史に残る世界的ヒットを記録した。2015年には、恐竜たちの生態が楽しめるテーマパーク「ジュラシック・ワールド」シリーズが始動し、続編『ジュラシック・ワールド/炎の王国』、完結編『ジュラシック・ワールド/新たなる支配者』の3部作も人気を博した。
映画『ジュラシック・ワールド/復活の大地』は、そんな不朽の名作「ジュラシック」シリーズの新章の幕開けとなる作品だ。
製作総指揮にスティーヴン・スピルバーグ、主演に「ジュラシック」シリーズ初の女性主人公となるスカーレット・ヨハンソンを迎え、前作『ジュラシック・ワールド/新たなる支配者』から5年後の世界をダイナミックに描く。
また、「スター・ウォーズ」のスピンオフ映画『ローグ・ワン/スター・ウォーズ・ストーリー』や『GODZILLA ゴジラ』で知られるギャレス・エドワーズが監督を務めることや、シリーズ1作目『ジュラシック・パーク』と、1997年公開の2作目『ロスト・ワールド/ジュラシック・パーク』にて脚本を手掛けたデヴィッド・コープの28年ぶりのカムバックでも話題を集めている。
そんな世界中で愛される「ジュラシック」シリーズの最新作公開に先駆け、監督のギャレス・エドワーズと脚本家のデヴィッド・コープにインタビューを敢行。『ジュラシック・パーク』公開当時の心境から、2人が映画製作において大切にしている信念、今作『ジュラシック・ワールド/復活の大地』のストーリーまで、貴重な話を伺うことができた。
ギャレス監督は、1993年公開の『ジュラシック・パーク』を初めて見た時のことを覚えていらっしゃいますか?
ギャレス・エドワーズ: もちろん覚えています。当時私は17歳でした。スティーブン・スピルバーグが『ジュラシック・パーク』の映画を作っていると知っていたので、本を買って読んでいたのですが、読み終わる前に友達に映画館へ連れて行かれてしまった(笑)。
でも後から、‟結末を知らずに見に行って良かった“と思いました。本と映画で終わり方が完全に違ったので。
デヴィッド・コープ:確かに違う。
ギャレス・エドワーズ:そうですよね。映画を見たあとに、‟エンディングを知ってる“と思って続きを読んだのに、実際は全然違ったので驚きました(笑)。
映画を見た時の感想はいかがでした?
ギャレス・エドワーズ:映画は、世界中の皆さんと同じく、とにかく圧倒されました。『ジュラシック・パーク』から映画が変わったと感じましたし、二度と塗り替えられない映画史に残る作品ですよね。
この世で初めて‟本物の恐竜“をスクリーン上に映し出したんですよ!本当に素晴らしい世界を作り上げていましたし、あれを超える衝撃は未だに破られていない。本当に‟すごい”に尽きる映画だと思います。
『ジュラシック・パーク』の公開後、新たな映画を作るための激しい競争が繰り広げられました。でも私のような映画製作者にとって、本当に良い学びだったと思います。『ジュラシック・パーク』が公開された時、デヴィッドがどう感じていたのか気になる。あの映画を製作したから、もう‟自分はもう世界の王様だ!“ぐらいに思ったんじゃないですか?(笑)
デヴィッド・コープ:『ジュラシック・パーク』の出来は、悪くないと思っていました。ヒットしたなと実感したのは、ニューヨークで別の作品を製作している時に、ジーグフェルド劇場という大きい映画館の前を通りがかった時。
ちょうどチケット売り場から店員が出てきて、長蛇の列に向かって「今晩7時の回の『ジュラシック・パーク』は売り切れです!」とアナウンスしていたんです。率直に「おー!すごい!」と思いました。その後、また彼が「10時の回も売り切れです!」と言って、僕は最高の気分でした(笑)。そして「明日の夜7時と、10時の回も売り切れです!」と言われた時に、自分はまだ映画業界に入ったばかりではあったのですが、ヒットを確信しましたね。とても嬉しかった。
ギャレス・エドワーズ: ちょうどその時、私はバーでバイトをしていました。夜になるとお客さんがどんどん来て提供が追いつかず、クレームにもなって大変でした。バーの売上は通常の10倍。向かいの映画館で『ジュラシック・パーク』を見るために2時間くらい待たなければならないから、みんなバーで時間を潰していたんです。
デヴィッド・コープ:レイトショーの観客は、みんな酔っ払いでしたね(笑)。
世界中で歴史的大ヒットを記録しましたね。『ジュラシック・パーク』の脚本を書かれていた時は、不安とワクワク感、どっちが大きかったのでしょう?
デヴィッド・コープ:不安とワクワク感は両方ありましたけど、当時僕はまだ29歳で若かったので、なぜ自分が選ばれたんだろう?という疑問もあったんです。
‟自分はふさわしくない“と感じる気持ちを早く振り切って、僕が良いアイデアを持っていて、映画製作者たちがそのアイデアを気に入ってくれて、さらに僕のギャラが安かったから起用してもらえたと気付きました(笑)。
あと、映画監督や脚本家というクリエイターは、かなり強い自己主張を持っている人が多いです。自分が何か価値あるものを提供できるという感覚があるのですが、そういったエゴは捨てて、物語を作ることに集中しました。当時、私は10年間脚本を執筆していて、ストーリーを考えることが好きだったし、ほかの皆さんも私と同じように物語を楽しんでくれることを願っていましたね。
お2人は、今作の『ジュラシック・ワールド/復活の大地』をはじめ、多くの人々を魅了する映画をたくさん手掛けています。映画を製作するうえで、大事にしているポリシーは何ですか?
デヴィッド・コープ:‟何が人々を喜ばせるのか“を最初に考えます。変な言い方かもしれないけれど、時間の費やし方ってあらゆる選択肢がありますよね。
多種多様なアミューズメントやエンターテイメントが存在する中で、どうやって自分を楽しませるのか。何が自分を特別な気分にさせてくれたり、まるで別世界に運ばれたような感覚にさせてくれるのか。人によって様々だけど、どうやったら観客の皆さんに喜んでもらえるかを念頭に置いていますね。
映画においては、映画館に行き、席に座り、室内が暗くなって、ポップコーン食べながら、どんな世界へ運ばれていったら楽しいのか。それを考え続けるに尽きますね。
ギャレス・エドワーズ:難しいですね…。1つは、子供から女性まで幅広い観客、スティーブン・スピルバーグや脚本家のデヴィッドト・コープ、俳優、みんなを喜ばせたいっていう気持ちがあるわけです。でももう一方で「みんなを喜ばせようとして、自分が納得いかないことをしたら、結果的にひどい映画になってしまう」とも思っている。
なので、‟みんなを喜ばせたい“という気持ちは一旦しまって、自分が映画館で座って見ていたらどう思うか?を想像し、自分の指針にしています。例えば、撮影中の映像チェックでは、モニターの周りをカバーで覆って暗くして、指3本をモニター下部に置いて、映画館の前の席に誰かが座っているような状況を作り出すんです。
自分が映画館に行って見た時、この映像でよいのか?というのを基準にして撮影していますが、もちろん毎日何百万ドルという大金を使っているので、技術系の専門家たちのいろんな声を遮断するのも大変です。映画館で座っている‟1年後の自分“を想像して日々決断していくのは、本当にジレンマなんですけど、それでも自分を信じて撮り続けるしかないと思っています。
デヴィッド・コープ:おっしゃる通りですね。ギャレスは物事を想像で立体化して、壮大な世界観を作り出せる監督。しかも心に描いたものをいかにして具現化するか、それを編み出せるところが彼の才能だと思います。