パリファッションウィーク中の3月3日、アン ドゥムルメステール(ANN DEMEULEMEESTER)が2011-12年秋冬コレクションを発表した。
エリック・サティのピアノ曲「グノシエンヌ」が流れる静謐な雰囲気の中、発表されたのは黒を中心とした幻想的なコレクション。シルエットはリーンで縦長のものが中心で、テーラードをベースにしたジャケットは上からソリッドな太いベルトでコルセットのように締め、ボトムスにもタイトなパンツを合わせる。ひじまで隠れるロンググローブも縦長のシルエットをさらに強調していた。
シルエットはストイックだが、ディテールは徹底した装飾が施され、ブラックでほぼ統一されたコレクションに様々なバリエーションを生み出す。ベルトやトップスの襟元にはカラスのようなフェザーをあしらう。長めのレースを垂らしたレースアップのディテールもジャケットのフロント、グローブ、ベルトなど様々なアイテムで多用された。
音楽は「白鳥の湖」を経てドビュッシーの「牧神の午後の前奏曲」へと移り、幻想的な世界が膨らんできたところで登場したのは毛足の長い雪男のようなファーのアイテム群。コートとして用いられたり、全身ファーのルックも登場した。特に赤やブラウンが混ざったファーは、空想上の動物のような不思議な存在感をはなっていた。強固な世界観を持ち、それをウェアラブルなファッションを通じて表現するデザイナーの力量をあらためて感じさせるコレクションだ。