トム フォード(Tom Ford)の2016年春夏コレクションは、1960年代のカルチャーを凝縮させている。着想源となったのは、アンディ・ウォーホールのファクトリースタジオに見られるようなアート、音楽、映画などをドッキングさせたミックススタイルだ。
コレクションでは、スーツ・カジュアルウェア・イブニングウェアを展開。まずは、細いノッチラペルのテーラードジャケットとクロップド丈のパンツ、ウエストコートを組み合わせたスリーピース・スーツスタイルからスタートする。
パレットは、宝石のようなジュエルカラーやブラックライン入りのモノトーンがメイン。Apple Watch用のポケットウォッチチェーンや斜めのストライプ模様のタイ、シルバータイバーなどのアクセサリーを添えて、アートピースを買い付けにきた画廊オーナーや美術愛好家を想起させるようなリッチな雰囲気を漂わせる。
60年代のロンドン・ニューヨークをイメージしたディウェアは、スリムなデニムジャケットやバイカージャケットに、襟高なモックネックのニットとテーラードパンツを合わせた、コンパクトなシルエット。オレンジやターコイズの強い色彩がアイキャッチなアクセントを加え、60'sの力強さを表現。
ラストを飾ったイブニングでは、アートシーンにスポットライトを当て、ポップアートやセルロイドカルチャーから、ユニークな模様やカラーを生み出した。音楽やファッションが若者たちの起爆剤となり、絶対的モードの中心・パリから、ロンドンに陽が注ぐ時代。今季のトム フォードは、そんなエネルギーと研ぎ澄まされた感性が融合している時代を描いているように見えた。