ドリス ヴァン ノッテン(DRIES VAN NOTEN)の2017年春夏メンズコレクションが、フランス・パリで発表。ウィリアム・モリスのアーツ・アンド・クラフツ運動の思想を現代の活動に重ね、芸術と生活を統一することをもう一度示した。
青みの強いグリーンやアースカラーに代表されるナチュラルな色合い、風化したようなカラー。地球の歴史や時間の流れを感じられるパレットに一転、シルバーなどの新鮮なカラーが加えられる。しかし、その豊かな色調だけでは語りきれないほどの多彩さは、テキスタイルの柄・素材・製法のそれぞれがこだわり抜かれ生まれるのだ。
エジプトにおける『モーセの発見』がプリントされたアンティークの手織りや、伝統的なキャベツ・リーフのモチーフ、花柄のタペストリー、アレキサンダー大王のバビロン遠征など、バロック時代や中世のアントワープやフランスなどの要素をテキスタイルに詰め込んだ。
それ自体を大々的に載せている場合もあれば、カモフラージュ柄にプラスしたり、デニム生地にぶつけることも。そこに、ダズル迷彩やシンプルなリネン、光沢のある生地や手編みのフリンジ、トーン・オン・トーンの手刺繍などを加え、芸術と現代の服飾の技術が共鳴を果たしているのだ。
洋服や生地自体の魅力だけでなく、スタイリングやディテールにもこだわりが散見される。構築的でタイトなジャケットは前のボタンを閉めるのではく、内側から伸びるストラップで固定し少しの抜け感を演出。ボトムには1サイズあげたようなワイドパンツを合わせ、上下のコントラストも見せている。
スポーティでルーズな着こなしでは、ショーツを合わせソックスやブーツの存在感をアピール。ハイウエストやビッグシルエットなどのアーバンスタイルと牧歌的な装いを明快にミックスする熱意がワードローブを盛り立てている。
ミニマルなシルエットと最大限に描かれたモチーフのコントラスト。モダンなフォトプリントで示されるのはバロック時代の芸術たち。しかもその素地はアンティークの手織りタペストリーだ。あらゆる方角からの対比と、その衝突に負けないそれぞれの要素。アートなどの手が届きにくいものを洋服に落とし込み、ドリス ヴァン ノッテンによる階級のないワードローブが完成した。