ニューヨークのリンカーンセンターで開催されたデレク ラム(Derek Lam)の2012年春夏コレクション。今シーズンのインスピレーション源は、著名建築家のリチャード・ノイトラによって1946年にカリフォルニアに建てられた、カウフマン邸。 自然で囲まれた静寂の中に佇む、白く無機質な建物。庭のプールが静かに風を受ける。 フランク・シナトラらが活躍していた時代のカウフマン邸に流れていたであろう、上品でラグジュアリーな時間が思い起こされる。
「未開の地で、最低限の必要品に囲まれ、温かみのある家に住む。これこそがもっとも健康的で寛げる場所なのではないか」と語るデザイナーのデレクの想いを受けた今季のコレクションは、シンプルでシックなスタイルを提案。ホワイト、ペールイエロー、ペパーミントなど柔らかな色合いを中心に、コーラル、オレンジといった鮮やかな色をダイナミックに織り交ぜている。
ニットを得意とするデレクらしく、最初のルックから、美しいクロシェ編みのニットが登場。完成された繊細な編み目と、ホワイトの眩い美しさが、まさにカウフマン邸を彷彿とさせる。それに合わせたマスタードカラーのレザージャケットの、モダンな切り返しも建築物を思わせ、更に観客の目を惹きつけた。
ショーの中盤には、万華鏡をイメージした、華やかな柄を全面に使用したドレスが次々と展開された。最後には、テーマをそのまま象徴しているかのような、クリーンなホワイトやコーラルの単色で構成される、シルクの上品なジャンプスーツが登場。風を受けて裾が柔らかになびく様子は、自然をそのまま受け入れるような、解放感に溢れた寛いだ印象を受ける。
華やかさとシンプルの共存、ミニマルな上品さを多彩なスタイルで披露した今回のコレクション。その象徴であるカウフマン邸が建つカリフォルニアがデレク自身の生まれ故郷でもあるためだろうか、洗練された中でも懐かしい温かみのある、どこかノスタルジックな印象も受けるコレクションとなった。