メルシーボークー,(mercibeaucoup,)の2017年春夏コレクションが発表された。前シーズンより始まった「日本の神話」の続きを描く今回。日本を作った2人の神、イザナギとイザナミの子であるスサノオとアマテラスが姿を現す。
スサノオは海の神。ホワイトとブルーの色合いやボーダーの取り入れ方など、今シーズンのマリンテイストはそこからイメージしたものだ。パンツやカットソーには、マリンパンツのようなボタンの配置が為されている。一方、アマテラスは太陽の神。彼女を呼び覚ます鳥の模様は連なることで千鳥格子としてスサノオに寄り添う。
マリンスタイルにも外せないデニムは濃淡はあれど比較的ライトな仕上がりで、そこに配された岡山刺し子は和の要素をそっと添えてくれる。“伝統的な技法を全てに取り入れるのは贅沢すぎるから少しだけ…”そんな気持ちからパッチワーク状に用いられた職人技は、デザイナー宇津木えりが込めた優しさのひとつのかたち。
彼らが住む天空にふわふわと浮かぶ雲はジャカードとなって現れる。神々の住処は神聖であるはずなのに、メルシーボークー,の世界では個性的。全面に施した表情豊かなトップスは先に紹介したデニムとの相性も良い。
洋服だけでなく小物も日本を意識したもの。誰もが神社で目にしたことがあるしめ縄の結びは、バッチとなって登場する。ロンドンストライプのクラシカルな素材にキュッと結ばれて、スタンダードをメルシーボークー,風に変えてしまう。手に持ったカバンもそう。平面的なのに手にすれば立体的になる不思議なフォルムは、オリガミをモチーフにしたものだ。日本の神話を語る今シーズンに欠かせない存在となっている。