名古屋・ヤマザキマザック美術館にて、展覧会「もっと知りたい名画の世界 よそおいの200 年」が、2017年4月22日(土)から8月27日(日)まで開催される。
本企画展では、17世紀後半から20世紀初頭にフランスで描かれた絵画を中心に、当時の装飾品や調度品を合わせて展示することで、ヨーロッパの美術と装いの文化が広く紹介される。
見所は、フランスを中心とするヨーロッパの、200年もの宮廷ファッションを一望できる展示だ。貴族たちが着ていた豪華なドレスや衣服を、宮廷の部屋の装飾をイメージした展示空間で楽しめる。
出展される絵画作品は、貴族の肖像画を中心としており、そこから当時のファッションや文化を窺い知ることができる。「太陽王」ルイ14世と17世紀のフランスを代表する俳優にして喜劇作家のモリエールを、ジャン=オーギュスト=ドミニク・アングルが描いた《ルイ14世の食卓のモリエール》。重い巻き髪や全身リボンの装飾などが見てとれるが、これらは当時流行した宮廷ファッションである。
18世紀、ロココの時代に入ると、フランスのファッション産業は大きく開花する。ヴィクトワール・シャルティエの《雅やかな場面》(長坂バロックコレクション)には、優美な羽根飾りやレース飾りを身に纏った煌びやかな女性たちが描かれている。ポンパドゥール夫人やマリー・アントワネットに代表されるように、女性たちが輝きに満ちていた時代であった。
古代への興味からローマやギリシャ風のファッションが流行したのもこの時期。エリザベト・ルイーズ・ヴィジェ=ルブランの《リラを弾く女性》には、肌が透けて見えるほど薄く、柔らかな生地でできたガウンを着用した女性が描かれている。古代ギリシャのキトンのようなこのシュミーズ風ガウンは、当時の女性たちの間で好まれていたファッションである。
その後、19世紀の王政復古はロココを彷彿とさせるロマンティックな様式のファッションを流行させた。19世紀後半には、袖山を盛り上げ、ウエストを絞り、スカートの裾をベル型に広げた「砂時計シルエット」のドレスが姿を現しだす。自然界の有機的な曲線を理想とした、アール・ヌーヴォー小式の隆盛がさらにこのドレスの曲線を強調したものへと変化させることとなった。
さらに、絵画や衣服以外に、18世紀の香水瓶や扇、髪飾りといった小物類も展示されるほか、日本の洋裁教育の学術展示も行われる。
なお、ヤマザキマザック美術館は、18世紀から20世紀に至るおよそ300年ものフランス絵画コレクションに加え、アール・ヌーヴォーの家具や工芸品、なかでも質の高いエミール・ガレ最晩年のガラス作品を多く所蔵することで知られている。
また会場では、「化粧・女性・美意識」をキーワードに東西の”美”に関する広い研究を行っている「ポーラ文化研究所」の所蔵品も約100点が公開される。当時流行したドレスや髪型、装身具が描かれた華やかなファッションプレートも約40点や、ヘアスタイルを1/2サイズで復元した結髪雛形約20点などを展示。絵画と合わせて見ることで、より貴族たちの華やかで美しい生活や美意識をリアルに楽しむことができるだろう。
展覧会「もっと知りたい名画の世界 よそおいの200年」
期間:2017年4月22日(土)〜8月27日(日)
時間:平日10:00〜17:30、土日祝 10:00〜17:00 ※入館は閉館の30分前まで
休館日:月曜日※ただし5/1、7/17、8/14は開館。(月曜日が祝日の場合は翌平日休館)
会場:ヤマザキマザック美術館
住所:愛知県名古屋市東区葵 1-19-30
入館料:一般 1,300円、小・中・高生 600円、小学生未満無料
※音声ガイド無料サービス
※一般10名以上の場合は一人1,100円
講演会情報:
■「ロココからベルエポックのメークアップ・ヘアスタイル」
日時:2017年5月14日(日) 14:00〜
講師:津田紀代(元ポーラ文化研究所主任学芸員)
■「パリ オートクチュールの”裏”側―構成学的な見地から」
日時:6月4日(日) 14:00〜
講師:滝澤愛(椙山女学園大学講師)
■「ヨーロッパのファッション史 -王子様とお姫様から紳士淑女まで」
日時:7月16日(日) 14:00〜
講師:能澤慧子(東京家政大学教授)
■「18世紀フランスから現代のコスプレ文化への繋がり」
日時:7月22日(土) 14:00~
講師:小栗徳丸(イベントプランナー、名古屋文化短期大学講師、和歌山大学客員教授)
予約:不要 ※定員80名の先着順
参加費 無料 ※ただし当日の鑑賞券または半券が必要
開催場所:マザックアートプラザ4階会議室(美術館北側隣接ビル)