ミキオサカベ(MIKIO SAKABE)の2018年春夏コレクションが渋谷ヒカリエで2017年10月21日(土)に発表された。
ショースタートに当たって、2017年春夏コレクションでのデザイナーの坂部三樹郎の言葉を今一度思い返したい。「これまでは東京カルチャーに魅せられてきたが、海外で学んで見てきたものにも向き合い、今までやってこなかったことにチャレンジしたい」と語っていた坂部。今回はどのようなショーを見せてくれるのかと、超満員の会場は期待に満ち溢れていた。
今季は、いろんな和をミックスしているという。正直一目見ただけでは理解しがたい。しかし、よく見てみるとうなずける部分が多いのだ。序盤で登場した、ベストをレイヤードしたようなラペルの大きなジャケットワンピースは、OLがインスピレーション。バッグはというと女子学生が持つようなスクールバッグ。髪型は花魁風。あらゆる時代の日本の女性像が交差することで、ひとつのスタイルが作りあげられている。
2017年春夏シーズンで話していたことは、ヨーロッパの歴史から紐解いたバッスルスタイルのようなフォルムや、ジコ袖のドレスルックに繋がるだろう。と言っても、単にそれをそのまま入れ込めば、和の要素と衝突してしまう。だから、例えば、チュールで重ねたドレスはトレーンを引かずに片手で裾をたくし上げてみたり、ブラウスのカフスは敢えてパンツの裾に用いたり。いい意味での崩しが効いている。むしろそうであるからこそ、あらゆる女性像がうまく組み合わさり、純粋に“素敵だ”と思える。
テキスタイルは、壁紙のイメージ。きれいな壁紙ではなくて、少し汚れた壁紙だ。無造作に張られたグリッターのテープがキラキラと輝いていて、でもそれが今季の洋服にとてもマッチしている。パンツやジャケットの中には、まるではがれた壁紙のように、裾が垂れてしまっているものもある。こうしたディテールで感じる茶目っ気が多くなるにつれて、いつの間にか虜になってしまっている気がする。
最後に登場したハートと星のモチーフが、洋服から飛び出して絡み合った2ルックは、海外ではなく立ち戻って日本の文化の象徴。これは、現代のかわいい文化の表現のようだ。あらゆる時代をタイムスリップして、試行錯誤して戻ってきた現代の洋服は、“これが日本のかわいいだ”と言わんばかりのボリュームを誇った。
今シーズンのミキオサカベは、洋服に込められているものは複雑だが、でもやっぱり単純にカワイイとか自分らしくいたいとか、そういった理由で服をきることが楽しいことなんだと、ランウェイを通じて教えてくれた。自分にとっての“カワイイ”はきっと人それぞれ。「Amazon Fashion Week TOKYO」のラストにふさわしい、ミキオサカベらしさ満載の心に響くショーだった。